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18 名刺
姉が出掛けて誰もいなくなった家は、ひたすら静かだった。 居間のテーブルの上には、今日の新聞と、一枚の名刺があった。新聞は、もう午を過ぎていると云うのに、読まれた様子がなかった。名刺は、新聞の横に並べたように置いてあった。そこには「弁護士」と云う文字が見えた。苗字は有り触れたものだったが、名前は読みが分からなかった。 一枚だけの名刺が、不自然で、いかにも落ち着かなかった。少なくとも、それ以外に、母が不本意にも関わってしまった事故の、もう一方の当事者の名前の書かれた一枚が、ある筈だと思った。新聞を持ち上げ、テーブルの下を覗き込み、状差しを繰り、抽出しを掻き回し、住所録をめくった。・・・相手の名前が、少し前に聞いたばかりだと云うのに、どうしても思い出せなかった。 或いは、そもそも、名刺を置いて行く必要のない人物だったのかもしれない、・・・。そう、・・・そう云えば、男は、父が後援会の会長を務める議員の秘書だと云うことだった。それなら確かに、見つからない理由は分かる、・・・しかし、そんなことが、あり得るのだろうか、・・・。 父は、帰って来た。酔ったように、赤い顔をしていた。
お母さんは、大丈夫なんだよね?
・・・そう。・・・じゃ、やっぱり無理なんだね?
-Aug/31/1997-
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