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[小説 時] [40 納骨]

40 納骨

 束の間の休暇の後は、以前と何の変わりもなかった。只、相変わらず事故のことが頭から離れなかった。

 警察への通報がなかったことは、叔父が確かめてくれた。一月も経たない内に、秘書は起訴され実刑判決を受けた。

 執行は猶予されなかった。控訴しようともしなかった。姉からは、納骨の日が決まったと云う連絡があった。そうして、何もかもが、追い立てられるように終息しつつあった。しかし、依然として、咽喉に突き刺さったものは取れなかった。・・・何故だろうか、・・・。それはむしろ、次第に大きくなっていくような気がしていた。

 取り分け暑い日だった。朝の打ち合せが終わり、席に戻ると、机の上の電話が鳴った。

 やっと捕まったな。
 何かあったのか?
 話があるんだ。今日は部屋に帰るんだろうな。
 毎日帰ってるよ。
 昨日も?
 いや、昨日は帰れなかった。
 そうだろうな。
 何が言いたいんだ。
 部屋の方に電話をしたいんだが、何時頃が良いかな?
 十時過ぎなら何時でも。
 遅いな。九時じゃどうだ?
 何の話だ?
 後で話すよ。今は勤務中だ。
 分かった。待ってるよ。
 遅れるんじゃないぞ。

 受話器を置くと、不安だった。三日後には帰る、帰れば会える、何故それが待てないのだろうか、・・・。

 明日から、二日間の休暇を取ることになっている課長が待っていた。その間、課長の仕事を受け持つために、得意先を一緒に回ることになっていた。入れ違いに休暇を取る者が受け持つことは、引き継ぎができないと云う理由で、それまでに一度もなかったことだったが、その週末の前後には半分以上の課員が休暇を取ると云う事情があって、異例の措置となった。

 会社に戻り、引き継ぎを終えた時には、既に約束の時間を過ぎていた。飲みに行こうと云う課長の誘いを断わって、部屋に戻った。

 シャワーを浴び、ビールの栓を抜くと電話が鳴った。

-Oct/4/1997-

・・・つづく・・・



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