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[小説 時] [66 手垢]

66 手垢

 手紙は読んだ。・・・丁度忙しい時期で、返事を書けなかったよ。申し訳ない。・・・実際のところは、書こうと思えば書けたんだろうが、どう書いて良いか分からなかったと云うのが真相でね。
 構わないさ。返事を期待していた訳じゃない。今でも、変わらないのか?
 変わらない。・・・変わらないが、・・・。
 実際に、できると思うか?
 その心算だよ。
 気持ちは解るが、そう云うことは警察に任せるのが最善の選択だと思うね。この国は、まがりなりにも法治国家なんだから、・・・。そう思わないか?
 警察が動かないことは、はっきりしてる。それに期待して、何時までも待つ訳にはいかないんだよ。その間に、手が届かなくなってしまう。
 とても賛成できないね。
 選挙の結果は、目論んだ通りになった。それで禊は済んだ心算でいるだろうな。・・・あれだけのことがあっても、今まで何一つ間違いがなかった。全てが思い通りになった。これからも間違いは起こさないだろう。そんな相手に、尋常な方法で立ち向かおうとするのは、馬鹿気てる。
 他に方法はある筈だよ。
 法に手垢を付けた連中が相手でもか!
 待てよ。それとこれとは、別の問題だ。・・・確かに、根は同じだろう。だが、それを、無理に故事つけようとしてるとしか思えない。
 同じものだよ。仮に別々の問題だったとしても、解決の方法は一つしかない。
 お前らしくもない。
 そうかな?
 世間からも、勿論、法律からも制裁を受けるんだぞ。それでも、・・・。
 考え直す心算はない。・・・そのことで、もうこれ以上、議論するは止めよう。

-Nov/15/1997-

・・・つづく・・・



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