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[小説 時] [90 荷物]

90 荷物

 話を、聞かせて貰えるね?
 食事を先にしたいわ。
 いや、後にしよう。
 わたしがどんな荷物を持って此処へ来たのか、知ってるんでしょう?
 開けてみるまでは、単なる想像だからね。
 きっと、あなたの想像している通りよ。
 違うかもしれない。
 あなたが用意してくれた食事を、台無しにしたくないの。
 食事が逃げ出すようなことはないさ。
 でも、食事は逃げなくても、あなたが逃げ出すかもしれない。
 荷物を背負った儘の食事じゃ、肩が凝るよ。・・・早く降ろしてしまえば、それだけ早く立ち上がれる。
 立ち上がっても行く所がなかったら、どうすれば良いの?
 必ずあるさ。
 お見合いをしたの。
 何時?
 丁度、一月前。・・・誰だと思う?
 さあ、見当も付かないね。
 あなたがご執心の人よ。
 まさか、・・・。
 その、ま・さ・か。
 どうして、・・・。
 驚いたでしょう?・・・どう言われても、食事の前に話すことじゃなかったわよね。・・・でも、あなたがいけないのよ。
 何故だ?
 お父さんが、・・・。ねえ、後にしましょう。・・・食事が咽喉を通らなくなるわ。
 続けて、・・・。
 お父さんが、あなたのことは、もう、諦めなさい、って・・・。何時までも、待つ訳にはいかない、って・・・。それで、この話。・・・断われなかった。・・・あなたに、連絡しようとはしたの。でも、電話で説明できるようなことじゃないでしょう?
 説明?・・・何の?

-Jan/18/1998-

・・・つづく・・・



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