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[小説 時] [95 返事]

95 返事

 あなたが、今にも落ちそうな実を、採ろうとしてくれた時には、・・・身体から、すっと、力が抜けて行くような気がしたわ。・・・良かった、待った甲斐があった、・・・此処へ来て、本当に良かった、今なら、まだ間に合う、・・・そう思った。・・・それから、まだ、幾らも経っていないのに、・・・わたしが、どんな気持ちでいるか、・・・言いたいことはどんなことで、どう云う返事を期待しているか、・・・あなたは、みんな知ってる、・・・それなのに、少しも、・・・その一言を口にしてくれようとはしない。
 ・・・・・。
 あなたが、づっと棄て切れなかったものを、棄てて欲しいと言ってる訳じゃないわ。・・・只、それとこれとは別にして欲しかった。・・・相変わらず、過ぎてしまったことばかり気にして、・・・無駄な時間を掛けて、・・・そうしている内に、何もかも、ひどいことになった。・・・そう、・・・もう少し早かったら、・・・きっと、こんなふうにはならなかった!
 ・・・・・。
 あなたが、何を待っているのか、わたしには解らない。だって、何も話してくれないんだものね。でも、今では、もう聞きたいとも思わなくなった。・・・只、あなたは実を採る決心をして、・・・わたしは、その実を手に入れるために、此処へやって来た、・・・それでもまだ待たなければならない理由を、どうしても知りたいのよ。
 ・・・・・。
 さあ、あなたにも言いたいことがある筈よね?・・・少なくとも、わたしが望んでいる返事を聞かせて貰えないなら、あなたが採ろうとしている実が、どんなものなのか、説明すべきだわ。・・・そうでしょう?・・・後、三歩だけ、何も言わないでね。
 ・・・・・。
 寒いわ。
 車に戻ろう。
 どうして? まだ、あなたの話が済んでないわ。
 頭の中を、少し整理したい。車を飛ばせば、一時間で着けるだろう。それまでは、何も聞かないでくれないか。
 どうしようとしているのかは知らないけど、それは、わたしに帰れと云うことじゃないでしょうね?
 話すよ、できるだけ・・・。

-Feb/11/1998-

・・・つづく・・・



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