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[小説 時] [139 尾鰭]

139 尾鰭

 何をそんなに入れ込んでるのかね、諸君?
 噂そのものは気にもならないが、何故今頃になって、そんな噂が流れているのかと云うことに興味があるね。
 いやいや、これは一年も前からある話の続編でね、尾鰭が付いて、とうとう足まで生えたってことですよ。何しろ、暇を持て余している連中は多いからね。
 警察の言うことを信用しない馬鹿がいると云う話か?
 そう、そうですよ。
 その馬鹿と云うのは、俺のことなんだろうな?
 その通り。・・・この街広しと雖も、お前の他にはいないね。我等健全な神経の持ち主には、とても考えられんことだからな。しかしだ、酒の肴には持ってこいだな。
 こいつ、酔っているんじゃないのか?
 飲んじゃいませんよ。
 しかし、何か気に掛かることがあったんだろう?・・・どんなことだ?
 もう決着したことだよ。
 本人もそう言っていることだし、この辺で、この話は、打ち止め、・・・。
 どうも分からんな。
 そうだろう。
 諸君、・・・諸君。正月早々、辛気くさい話は、もう止そうじゃないか。・・・それよりも、我々の、まだ少しは残っている前途に、・・・おい、・・・乾杯しよう。
 安上がりな奴だ。もう酔いが回っているらしい。
 いや、この様子じゃ、間違いなく何処かで一杯入れて来ている。
 そんなことはありませんよ。
 少し休ませたらどうだ?
 そうだな。
 冗談じゃない。この程度で尻尾は巻かんぞ。
 此処は大人しく言うことを聞いた方が良いよ。何しろ、お前には前科があるんだ。
 来たばかりじゃないか。・・・大丈夫だよ。心配には及ばぬ。
 いや、少し休んだ方が良い。まだ先は長いんだ。

-Dec/6/1998-

・・・つづく・・・



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