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】 [154 饒舌]

154 饒舌

 男はむやみに饒舌だった。そして、それに連れて酒の量も増えた。折角醒まそうとした努力が無駄になってしまうと云う女達の説得にも、耳を貸そうとはしなかった。目の前に新しいグラスが運ばれて来ると、殆どテーブルにそれを置くようなことはなかった。女達の喝采に気を良くしながら、冗談を言い、そして、飲んだ。

 何故これ程までに陽気なのだろうか、何故これ程までに陽気になれるのだろうか、・・・。この男にとって、不都合なことは何もないに違いない、仮にあったとしても、それがどんなことでさえ忘れてしまうことができる、・・・忘れてしまいたいと念じさえすれば、それで全てが済んでしまう、・・・。この男にはそれができる、この男に不可能なことは何もない、・・・。

 只、半年後の選挙のことだけが気掛かりなのだろう、何時もなら周りに侍っているいる筈の取り巻きが此処にはいないことに、不安を感じているようだった、・・・しかし、それも連日のように飲み続ける酒が解決してくれる、それでも不足ならば、店を幾つか整理することができる、田畑の一部を処分することもできた、その度に、不安は希望となり、希望は限りなく確信に近づいていく、・・・結果が良ければ、整理した店は何時か必ず倍になる、処分した田畑も倍になって戻って来る、・・・事実、この男の父親はそうして来た、今、この男も疑うことなくその父親になろうとしている、・・・。

 そうしたことを望めないとすれば、一体誰がそうした空虚な営みを許容しようとするだろうか、・・・そう、叔父がいみじくも言ったように、それは商売なのだ。

-Aug/1/1999-

・・・つづく・・・



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