[小説 時] [14 駅舎] |
14 駅舎
やっと見覚えのある駅に着いた。既に、陽は天空近くにあった。暑かった。駅舎の前に並んでいる電話のどれもが塞がっていた。それは、身体の中にあった不安を音もなく膨ませ始めた。 何かがあった、・・・! 埃っぽい駅前の広場を横切って、叔父の店に入った。しかし、叔父は不在だった。代わって長男が店に出ていた。改装したばかりの店は、明るく涼しかった。 今の列車ですか? そう。列車は疲れる。 昨日戻る予定じゃなかったんですか? 良い加減にしてくれよ。たった半日遅れただけだ。 済みません。どうぞ、使って下さい。 いや、・・・先に、会いたいんだ。何処の病院だって? でも、連絡する位は、・・・。 車を借りたい。 構いませんが、・・・。それじゃ、送りますよ。 ありがとう。・・・どう云うことなのか、経緯が良く分からないんだよ。 昨日の午過ぎ、叔母さんが交通事故に会って、・・・。それはご存知ですよね? いや。・・・それで?・・・その先は? 相手と云うのが、親父さんの、秘書の・・・。 親父さんの秘書? そうですよ。・・・さあ、後は、車の中で、・・・。 それで、どうしたんだ? とにかく、行きましょう。 -Aug/27/1997-
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