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[小説 時] [19 挨拶]

19 挨拶

 これから、どうする心算?
 もう少し様子を見なければ、どうしようもない。
 それだけ?
 そうだ。・・・他に何かあるのか?
 最悪の脚本だ。
 覚悟を、しておいた方が良いな。
 その秘書には会ったの?
 ああ。昨日、早速挨拶に来た。
 挨拶?・・・詫びに来たんだろう?
 そう、詫びに、だ。
 何か、それ以外に話があったよね。・・・本家で相談って云うのも、そのことだったんでしょう?・・・どんな話だったの?
 これから、警察へ行く。一緒に行こう。・・・病院で降ろしてやる。

 警察、って・・・何故?
 話が付いた。・・・それを説明しなくちゃならん。
 まだ、何が起きて、これからどうなるか、手術をした医者でさえ分からないんだよ。
 何が起きて、この先どうなるか、そんなことは誰でも、もう知ってることだ。
 そんなことはない。
 決まったことだ!
 聞いてない!
 お前は、いなかった。
 ・・・せめて、もう少し様子がはっきりするまで、待つのが当り前じゃないか。・・・少なくとも、お母さんのために、・・・。
 はっきりしてる。
 そんなことはないよ。
 ・・・何時でも、水は高みから低い方へ流れている訳じゃない。勢いがあれば、逆になることもある。
 何に譬えようとしているのか、理解できないよ。
 その内に分かる。
 遣り切れない話だね。
 言うまでもないさ。
 それじゃ、どうして?
 どうしてもだ。

 車を、返さなくちゃならないんだ。一人で行くよ。
 お前のように、言いたいことを言って、それだけで、どんなことも片が付くんなら、それに越したことはない。・・・だが、実際には、それ程単純なことばかりじゃないんだ。その程度のことは、もう、知っておいた方が良い。
 できることなら、そう云うことは知らずに済ませたいね。
 暫くは、それでも通用するだろうが、・・・何時までも、避けてばかりはいられない。
 こんな時に、そんな話は聞きたくもないよ。・・・もう良い。行くよ。
 警察が済んだら病院へ行く。時間には間に合うと思うが、何かあったら警察の方へ連絡してくれ。
 分かった。・・・ごめんなさい。只、こんなことって、実際にあることだとは思ってもみなかったし、詳しい経緯が殆ど分からなかったから、づっと、苛々してた。・・・何かできることはない?
 何があっても、暫くは、母さんのためだと思って静かにしていなさい。呉々も、角を立てるようなことはするなよ。お前のことだけを考えていた母さんのためだ。
 自信がないよ。
 お前だけじゃない。
 信じられないね。
 良くあることだ。
 確かに、・・・信じていても、裏切られることは多いものね。でも、そんな一言で、済ませられることじゃないよ。

-Aug/31/1997-

・・・つづく・・・



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