[小説 時] [42 食欲] |
42 食欲
夏場で、幾らか仕事の薄い時期だとは云っても、二人分をこなすのは骨の折れることだった。それでも、大過なく二日間が過ぎた。その日、引き継ぎ事項をメモに残し、誰もいなくなった会社を出た。様子はどう? まあまあ、かな? それは良かった。 今何処から?・・・まだ会社なの? 今、出たところだ。 食事は? これからだよ。 良かった。わたしも、まだなの。 こんな時間まで何も食べないのは、良いことじゃないぞ。 昨日から、あまり食欲がないんだもの。この暑さだし、それに、一人じゃね。 こう云う時だからこそ、気を付けなくちゃね。 夕方から、こうなる予感がしていたの。これからすぐに仕度をするわ。・・・あなたって、来て欲しいと思っている時には、必ず来てくれるのね。 店に寄って、お父さんに許可を貰ったら、すぐに行くよ。 いや。・・・すぐに来て。 そうはいかないよ。 じゃ、お父さんには、わたしが電話する。だから、・・・。 分った。此処からすぐに電話をするよ。 だめ。わたしがするの。 どうして? どうしてもよ。来れなくなったなんて、そんな返事を聞きたくないんだもの。 どっちが電話をしても、お父さんの返事は同じだよ。 違うわ。・・・急いでね。遅い食事は、美容の大敵なんだから。そうでしょう? -Oct/11/1997-
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