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[小説 時] [44 無理]

44 無理

 いらっしゃいませ。
 おじゃまします。
 この度は、ご愁傷様でした。もっと早くご挨拶しなければならなかったんですが、なかなかお会いできる機会がなくて、・・・。申し訳ございません。
 いいえ。会葬して戴いただけで充分です。
 ありがとうございます。さあ、どうぞ、・・・。お連れの方は?
 此処で落ち合うことになってるんです。着いたら案内して戴けませんか?
 かしこまりました。・・・こちらへ、どうぞ。

 混んでいるようですね。無理なことをお願いして、すみません。
 とんでもありません。ご指名戴いて、大変光栄です。・・・お料理は、お揃いになってからで宜しいですか?
 そうして下さい。・・・ところで、連れが着くまでの間に、少し聞きたいことがあるんですが、構いませんか?・・・忙しいようでしたら無理にとは言いませんが、・・・。
 どんなことでしょう?
 市に、総合運動場を造る計画があることはご存じですか?
 ええ、存じています。
 場所が何処になるか、それは?
 ・・・・・。
 詳しいことを知りたいんですが、誰に聞けば教えて貰えるでしょうね?
 社長か専務に、お聞きになったら如何でしょう?
 何故、父や兄が知っているんですか?・・・どうして、そう思うんですか?
 お仕事の関係ですから、当然、・・・。
 まだ、一部の限られた人しか知らない話だと聞いてましたが、・・・。
 そうですね。でも、・・・。
 えっ?
 いえ。
 何故そこに決ったのか、その経緯はご存じですか?
 ・・・・・。
 何処から出て来た案なのか、それは?
 ・・・・・。
 何時頃、持ち上がった話ですか?
 一年位前、だったと思いますが、・・・。
 何か、その後に続くんですね? でも、あなたの口からは話せない、・・・。そう云うことなんですね?
 ・・・・・。
 そうでしょうね。無理なことをお願いして申し訳ありませんでした。
 いいえ。・・・それでは、ごゆっくりなさって下さい。

-Oct/11/1997-

・・・つづく・・・



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