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[小説 時] [49 否定]

49 否定

 やっぱり、だめだって。
 代わって下さい。
 無理だと思うけど、・・・。

 初めまして。・・・突然不躾な話で、大変申し訳ありません。
 返事はしましたよ。
 要件は、今、お聞きになった通りです。ご迷惑だろうとは思いますが、何とかご協力をお願いできないでしょうか?
 できませんね。
 何故でしょうか?
 困るんですよ。
 理由を聞かせて戴けませんか?
 警察へ行って話をすれば、書類が残るでしょう。
 名前は伏せるように、話はできると思いますよ。
 そんなことは何の役にも立たないんですよ。調べようと思えば、誰にだって調べられるんだから、・・・。
 名前が出ては、都合が悪いと云うことですね?
 そうなれば、取引停止だ。
 そう云うことですか。・・・あなたの会社ですか?
 親父の会社ですよ。取引停止となれば倒産するような、小さな会社ですよ。あんたのところとは違うんだ。
 解りました。
 もう良いでしょう?
 一つだけ、・・・彼女の意志で警察へ行くことは、了承して戴けますか?
 別に知ったことじゃない。でも、・・・警察が来たら、否定しますよ。
 裁判所は、その時点までに明らかになっている事実を基に判決します。その意味では、正しい判決でした。だが、今は違う。もう一度、新しい事実を基に、判断し直すべきだと思っています。これは、もう済んだことだからと、簡単に割り切ってしまえることじゃありません。そのためには、どうしてもあなたの協力が必要でした。
 そんなことは、俺の知ったことじゃないよ。あんた達が好きにやるのは構わないが、巻添えを喰うのは後免だ。
 そうですか。・・・分かりました。今の話はなかったことにしましょう。あなたは何も見ていなかったし、何も聞かなかったし、勿論、何も話さなかった。・・・ありがとう。無理なお願いでしたね。お詫びします。

 ね、だめだったでしょう?
 そう、無理なことでしたね。
 どうする?
 事実は、何時も最優先されるべきだと思ってたよ。・・・それも、どうやら、違っていたようだ。・・・あなたにも、お詫びします。話を聞かせて貰うだけの約束だったのに、無理なお願いをしてしまって、・・・。
 良いんです。
 今日は、どうもありがとう。車を呼びます。・・・送って貰えないか。
 良いよ。

-Oct/18/1997-

・・・つづく・・・



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