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[小説 時] [54 署長]

54 署長

 これから帰ります。
 そうか。・・・まあ、これで取り敢えずは、一段落と云うところだな。
 本心から、そう思ってるんですか?
 取り敢えずだ。・・・先のことは分からんからな。
 叔父さんは、知ってるんでしょう?・・・事故が起きたのは、二時頃なんかじゃない。・・・だって、午過ぎには、もう警察に連絡が入ったんでしょう?・・・いくら特殊な能力を持った人間だって、事故が起きる前に、話はできませんよ。
 はっきりと、その話だったと言い切れる訳でもないし、それに、良く考えれば、あの日は、警察を出て、寄り道をして、戻ったのが四時頃だったから、電話があったのは、その頃だったかもしれんしな。
 そうだとしても、病院へ運ぶよりも先に、警察へ連絡したことになりますよ。
 時間までは、良く覚えてないが、多少のずれはあるかもしれんだろう。・・・それがどうかしたのか?
 事故が起きたのは、秘書の言う時間よりも、もっと前だったんですよ。・・・そう、叔父さんが署長と話をしていた頃です。母は、その間、放って置かれたんです!。
 ・・・・・。
 どうしたんですか? 何を恐れているんです?

 まだ、休んでいるかと思いましたよ。
 つい今しがた、目を醒したところなんです。
 早くから申し訳ありません。
 いいえ、もうこんな時間ですから、・・・。ところで、何か?・・・忘れ物ですか?
 忘れ物?・・・ええ、そう、確かに、忘れ物です。
 気が付きませんでしたけど、何でしょう?
 お礼を、・・・忘れてました。
 何のことですか?
 電話と手紙の狂言ですよ。
 そのことですか。・・・本当に、申し訳ありませんでした。
 とんでもない。むしろ、あなたの精一杯の心遣いに、とても感謝しています。・・・どうもありがとう。・・・只、一つだけ、聞きたいことがあります。・・・同じ日の、同じような時間に、同じ店を使うなんて、とても偶然とは思えない。あれは、あなたが、そうしてくれたことなんですね?
 とんでもない。わたしに、そんなことができるとお思いですか?
 そうかもしれません。でも、本当は違うんでしょう?
 いいえ。偶然です。
 仮に、偶然だったとしても、あなたにその意志がなかったら、怪し気な取り合わせを目撃することはできなかった。・・・ありがとうございました。聞きたかったのは、それだけです。

-Oct/25/1997-

・・・つづく・・・



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