[小説 時] [55 区切] |
55 区切
この度は、いろいろとお心使いを戴きまして、ありがとうございました。いや、わざわざ、礼には及ばんよ。 お陰様で、無事済ませることができました。 これで、やっと一区切りついて、少しは落ち着くだろう。 そのことで、お願いがあります。・・・まだ、整理のつかないことが、幾つかありまして、何とか、それを片付けたいと、思っております。・・・そのために、一年、待って戴きたいんですが、お許し戴けないでしょうか。 一年?・・・喪が明けるまでと云うなら分かるが、何故一年なんだ? 何とか区切りをつけたい、それだけです。 娘も、もう若くはない。 承知しています。この話を反故にする心算で申し上げている訳ではありません。 一年か、・・・。どうだ? ええ、わたしは構わないわ。できたら、そうさせてあげて。 いずれにしても、年が変わってからと云うことにはなるだろうが、・・・確かに、それも一つの区切りかもしれんな。 我儘を言って、申し訳ありません。 しかし、一年と言わず、早いに越したことはないんだ。 わたしも、できればそうしたいと思っています。 凡その時期だけでも、決めておくことはできんのか? もう少し、時間を戴けないでしょうか? 事情は良く分かっている。君の言うことも尤もだ。只、親としては、娘のことも良く考えて欲しいと思ってるんだよ。 それは充分承知している心算です。・・・ありがとうございます。 会えないかと思った。 疲れたよ。 わたしには、もう少し詳しく話してくれるわよね? 何を? 一年で済みそうなことなの? 勘が良いんだね。・・・お父さんも、そうだろうか? さあ、どうかしら? 待って欲しいんだよ、何も言わないで、・・・。 わたし達、知り合って何年になると思う? えっ? わたしが中学生の時だったから、十五年よ。 そうだね。 で、やっと、結婚できることになったわ。 何の話だ? だから、どんなことでも話して欲しいの。 その心算だよ。だが、今じゃない。 どうして? 僅か三日の間に、いろんなことを知ったよ。それを、これから組み上げたい。・・・絵ができ上がりさえすれば、どうすべきかが解る。そのために、時間が欲しい。 それだけのことに一年もかかるの? 待って欲しい。今は、それだけしか言えないんだ。 何時になったら説明して貰えるの? 雪が降るまでには、はっきりさせたいと思ってる。 待つわ。 ありがとう。約束は守る。 -Oct/25/1997-
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