[小説 時] [78 汚点] |
78 汚点
会社に着いた時には、椅子にも座れない程ずぶ濡れだった。部屋の方々で整髪用のドライヤの音がし、空調機の前は椅子の背凭れに掛けられた上着が並んでいた。扉を閉めてしまえば外の光が届かない会議室で、月例の打ち合せが始まったのは、定刻を一時間以上も過ぎてからだった。それでも、何人かは遅れ、何人かは結局姿を見せなかった。何時ものように会議は始まり、突然の雨の話題を除いては代わり映えのしない話が続いて、そして何時ものように終わった。執拗に襲ってくる眠気に耐えるだけだった会議が終わる頃には、濡れた靴も乾き始めていた。 会議室を出ると、既に雨の上がった空を窓越しに見ることができた。夏の陽が戻って、街は煙っていた。
何時も、自分の知らない間に変化の瞬間はある、・・・これまでづっと、例えそれが自分に大きな関わりのあることでさえ、それに関わることができなかったと云う、或は、その瞬間に自分はそこにいることができなかったと云う、いかにも遣り場のない不満とか苛立ちとかをどうしても拭い切れなかった。 -Dec/18/1997-
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