[小説 時] [91 限界] |
91 限界
お父さんの我慢も、もう、限界だったのよ。あなたからは連絡がない。電話を入れても継がらない。・・・あなたのお父さんにも、話したわ。どうしてなんだ? これまでにそう云う話は何度もあって、づっと、断わって来たのよ。お父さんも、今までは、何も言わなかった。でも、・・・今度だけは違ったわ。 おかしい。 あなたから、何度か名前を聞いていたせいで、会うのはその時が初めての筈なのに、・・・何度も会ったことのあるような、不思議な感じがしたわ。それに、想像していたよりも、精悍そうで、・・・あなたよりも、づっと若く見えた。決断も早いし、力もある。申し分ないと思わない?・・・ねえ、聞いてるの? 何故そんな言い方をするんだ! ごめんなさい。 そう云うことか。やはり、あの時、会う訳にはいかなかったんだ。 この話が持ち上がった時には、みんな、・・・決っていたんだって。・・・そんなことって、ある?・・・ねえ、わたしは、・・・ねえ、どうすれば良かったの? 何かあるとは思っていた。 この一月の間、づっと、会いたいと思ってた。連絡したいと思ってた。あなたに、・・・どうしても、会いたかった。・・・でも、できなかった。・・・どうして? 想像していた通りだ。 此処では、・・・泣きたくなかった。だから、・・・そのために、・・・そのためだけに、一月が必要だった。辛い一月だったのよ。・・・でも、だめだった。 懲りない奴等だ。 -Feb/11/1998-
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