[小説 時] [92 選挙] |
92 選挙
お父さんは、断わらなかった。それだけじゃないの。・・・わたしの、最後の我儘を、此処へ来ることを許してくれたわ。・・・それがどう云う意味か、解るわよね?・・・あなたは、きっと、どうすることもできない。・・・どうすることもできなければ、あなたも、わたしも、諦める他はない。・・・その通りよね。筋書き通りよ。あの時、あんなことがなければ、こんなことにはならなかった。 でも、もう元には戻せないことだわ。・・・だから、・・・だから、わたしには、この荷物、重過ぎるのよ。・・・お父さんは、もう、手を貸してくれない。でも、・・・此処へ来れば、あなたがいて、手を貸してくれる。 選挙、・・・? 手を貸してくれるわよね?・・・あなたにはそれができるし、・・・わたしには、あなたの手が必要なのよ。・・・もう、一人では、立ち上がれないのよ! 今度の選挙は何時? 話は断わった。それを聞いて、・・・お父さんは、・・・怒った。・・・初めてだったわ。・・・怖かった。・・・わたしが、それまで支えにして来たものは、・・・今も、これからも、支えにできるんだろうか、って。・・・もう一度、・・・はっきりと、それに応えて欲しいの。 何も持たずに、此処へ来た訳じゃない。 お父さんは、二人が結論を出すだろう、って返事をしたそうよ。・・・二人って、誰のこと?・・・決っていることを、変えられるとしたら、それは、決めてしまった本人以外にはないこと位、誰にだって分かることよね? 今度の選挙が何時か、それが知りたい。 選挙がどうだって云うの! 帰ったら、すぐに調べて連絡して欲しい。 帰っても良いの?・・・この儘帰れば、どうなると思う?・・・それ位のことが、どうしてあなたには解らないの? -Feb/11/1998-
|