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[小説 時] [94 期待]

94 期待

 あの橋まで、何も言わないで頂戴。
 ・・・・・。
 急に、ごめんなさい。
 良いんだよ。
 返事は良いの。
 ・・・・・。
 此処へ来るまで、づっと、期待していたことがあったわ。・・・わたしが、・・・我儘を言って、・・・あなたは、それを、・・・どんなことだって、許してくれる、ってこと。
 ・・・・・。
 二年前に約束したこと、忘れているんじゃないかなって心配していたのよ、づっと、ね。だって、そうでしょう?・・・でも、忘れないでいてくれた、・・・とても、嬉しかった。
 ・・・・・。
 でも、あなたに期待していたのは、そればかりじゃないのよ。
 少し前までは、その期待に副う心算だったし、今でも、覚悟さえできれば・・・不可能なことじゃない。・・・只、それは、・・・難しくなった。
 ええ、そうでしょうね。でも、もう少し待って、・・・。あなたの話は後で聞かせて貰うわ。だから、もう少し、待って、・・・。
 その心算だったんだよ。
 もう良いわ。・・・だって、何度も、口に泡しながら、言い合ったことだもの。何時も、・・・泣き出すか怒鳴り出すかしないと、終わらなかった話だもの。・・・わたしがあなたを説得するなんて、始めから無理なことは解ってた。でも、そうしないではいられなかった。・・・せめて、わたしが一人で、どんな思いをしながら、あなたからの連絡を待っていたか、・・・それを察して欲しかったのよ。・・・待たせた人にとっては、たかがの一年でも、待つ人には、・・・それが、どんなに長い時間かを、知って欲しかった。・・・そんなことだって、きっと、あなたには期待しちゃいけないことなのよね。
 ・・・・・。
 あなたに会ったら、うんざりする位、・・・泣き言を並べてやろうと思ってた。・・・あなたの顔を見たら、大声で泣いてやろうかなって、考えてた。・・・それ位のことは、許されて当然よね?・・・もう少し、我慢してね。

-Feb/11/1998-

・・・つづく・・・



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