[小説 時] [100 時計] |
100 時計
会って、謝りたかった。・・・会って、償いをしたかった。・・・その重そうな荷物を、降ろしてやりたかった。・・・話を聞くまでは、それも一つの方法だろうと思っていた。その話を先に聞きたかったわね。 そうすれば、・・・此処で、乾杯さえできなかっただろう。 それでも良かったわ。 それは解らない。 どうして? 傷がまた疼き出した。・・・もう、これ以上、放置しておくことは危険だ。・・・時計に、この問題の解決を委せてしまう訳にはいかない。とすれば、思い切って手術をする以外には方法がない。・・・しかも、もう少しで、手を伸ばせばそれができる。 時間がないのよ。 時は、・・・もうすぐ、やって来る。 何時? すぐに、・・・。 何度も聞いた話ね。 手術をすれば何時かは癒えるが、この儘放っておけば、何時までも疼き続ける。 今まで、あなた一人では何もできなかった。だから、遠回りをしてみようとしたんでしょう?・・・是非、そうして頂戴。その為なら多少の痛みは我慢するわ。 見て欲しくないんだ。・・・手術をするのは一人でたくさんだよ。・・・手術が無事に済んだとしても、傷跡は残るだろう。恐らく、それは何時までも消えることはないし、見るに耐えられない程醜いものかもしれない。・・・それに、傍にいれば、例え何の関わりがなくても、忌まわしい血を浴びなければならなくなる。・・・そんなことを望める訳がない。 構わないわ。 そうかな? どうして?・・・覚悟があって此処にいるのよ。 -Feb/22/1998-
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