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[小説 時] [102 本質]

102 本質

 特別なことを望んでいる訳じゃない。・・・単に、この、肩に食い込んだ荷物を、降ろしたいだけなんだよ。たったそれだけのことだ。
 そうして頂戴。
 この儘では無理だね。
 どうして?・・・あなたの両手は空いてる。
 今は、片手を何時でも空けておく必要があるんだよ。・・・降ろす時には、一つづつじゃない。二つを、一度にだ。そのために、・・・。
 結局、同じ所へ戻った訳ね。
 言い訳はしないよ。
 もう、たっぷりと聞いたわ。
 今度の冬には、・・・残った小節が完成するだろう。
 その頃には、誰も、見向きもしないでしょうね。

 今年の冬は、雪が多いかもしれないな。
 どうして?
 この何年か、雪の少ない冬が続いたからね。
 それだけ?
 そう。・・・他に何かある?
 もう少し科学的な理由があるのかと思った。
 どんなに経験を積んでも、人の手の及ばないことはあるよ。だから、人ができることと云えば、只、祈ることだけだ。・・・今は、ひたすら雪が降って欲しいと思っている。
 どんなに祈っても、手が届かないことってあるわ。
 そう、確かに、あるだろうね。だからこそ、祈るんだと思うよ。
 それでどうにかなると思う?
 結果が思い通りにならないことは良くあることだよ。只、少なくとも、結論が出るまでの間は、間違いなく人を支えてくれる。・・・それが、祈ることの本質だと思うね。
 こんな時には、もう少し期待を膨らませてくれるような話をして欲しいわね。
 期待は、必ずしも結果を保証しない、・・・。
 何?
 何んでもないよ。
 そう?・・・はっきりと聞こえたわよ。

-Feb/28/1998-

・・・つづく・・・



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