[小説 時] [108 年齢] |
108 年齢
あなたは、・・・嘘が下手だから、・・・お父さんを説得するのは、とても無理、・・・。それに、あなたが苦しむのを見たくない、・・・。申し訳ないことをしたと思っているよ。随分期待を裏切ったからね。・・・何度も、理由を説明したいと思った。説明できない理由を、・・・説明したかったよ。何度も口に出掛かった。その度に呑み込んだ。その後で、何時も後悔したよ。話してしまえば、お互いに、どんなに楽になれるだろうか、って、・・・。理由にもならない理由なんだろうけれど、たったそれだけのことが、どうしてもできなかった。・・・そうだよ。怖かったんだよ。・・・理解して貰えないと云うことよりも、その話が、洩れてしまうかもしれないと云うことが、ね。・・・他人を信じられなかった。それが辛かったよ。 ええ、解るわよ。随分長い付き合いなんだもの。 やっと出た結論なんだ。・・・今更元に戻してしまうことはない。 もう良いのよ。 きっと、後悔することになる。 どっちを選んでも、どちらかが後悔するのよ。・・・だから、それでも良いの。 年齢をとったね。 ええ。 だから「それでも良い」なんてことはない。 あるわ、きっと。・・・だって、もう、決して若くはないもの。 きっと、酔ってるんだろうな。 あなたは、ね。 雪が、・・・降れば良いわね。 降るさ。 そうね。・・・きっと、降るわよね。 もうすぐだ。 もう、少し休みたい、・・・。 雪、・・・か。 ねえ、もし待てるとしたら、それで何が変わるの? これ以上の無駄話はしなくても済むだろうね。それに、見合いの返事も、・・・する必要がなくなるだろう。 きっとそうね。 ・・・待って欲しい。 ええ、・・・。 でも無理だろうね。 そうね。 そうだね。・・・やっぱり、諦めるよ。それが、最善の選択だろうから、・・・。 できると思う? できるさ。・・・雪は、必ず、降る。 -Mar/22/1998-
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