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[小説 時] [114 思慮]

114 思慮

 一年半の間に起きたうんざりする程の出来事、・・・その間、只、待つことしかできなかった自分の不甲斐の無さ、・・・。

 待つことで期待できるものよりも、待つことで失うものの方が、どんな場合にも大きいのだと云うことを、その乖離は時の経過と共に大きくなるのだと云うことを、知らされた一年半だった。そして、待つことしか残らなくなった時、それ以上待つことで得られるものは何もないと云うことに、気付くべきだった。

 退屈だろう?
 いえ。
 できれば、勉強を診てやって欲しいんだよ。都合はどう?
 別に都合の方はどうにでもなるんですが、・・・。
 今年も、もう一月ちょっとしかないからね。
 早いですね。
 どう?・・・できるだけ早く帰るから、・・・。
 そうですね、・・・。
 あの娘も喜ぶよ。
 それが心配なんです。
 大人のつまらない思慮は、子供にしてみれば大きなお世話なんだよ。
 そうでしょうか?・・・彼女の気持ちに応えられないと云うことは、はっきりしてるんですから、それをほじくり返すようなことは、できれば、避けてあげたいんです。
 それも一つの試練だろうな。
 自分が父親だったら、そんな悠長な言い方はしないと思いますね。
 どんなに小さな問題でも、解決しようとする前に一度は大きい器に入れてみることだよ。始めから問題に合わせて器を選んだりすれば、事はいよいよ面倒になる。
 折角ですが、今は、そう云う高尚な話を聞ける状態じゃないんです。・・・ひどい状態で、正月まで一月、神経が持ち堪えてくれるかどうか、・・・。
 簡単なことさ。抱えている問題が何時も一つだとは限らない。そんな時には、まずどれを先にしてどれを後回しにするか、それを判断するだろう?・・・でもね、何時も一つづつ片付けなければならないとは限らない。一つを片付ければ、残りも片が付いてしまうと云うことは良くあることだよ。一つの器に入れておけば、そうした絡み具合いが良く分かる。

-Mar/29/1998-

・・・つづく・・・



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