[小説 時] [115 屑篭] |
115 屑篭
いらっしゃい。ゆっくり飲みたかったのに、追い出されたよ。 実は、頼んでおいたの。あなたが来たら必ず寄って貰うように、って・・・。だって、幾ら電話をしても出てくれないし、先週はとうとう部屋まで押し掛けたのよ。 何時? 土曜日。 何時頃? 学校の帰りだったから、二時頃かな。・・・あの寒いところで一時間も待ったのよ。その上、メモを挟んでおいたのに返事もないんだから。 悪かったね。もう少し早く帰れれば、会えたかもしれないな。出張先の都合で打ち合せが遅れてね。・・・でも、メモは見てないし、見ていれば連絡した筈だよ。 いいえ。きっと屑篭の中にあるわ。 そんなことをする筈がないじゃないか。 分かるの。・・・この頃わたしを避けようとしてるでしょう? その必要もないし、その理由もないね。 ある! 一体どうしたんだ? あるわ! 思い過ごしだよ。 絶対ある! 落ち着いて、・・・。そんなことで大きな声を出すなんて、どうかしてるよ。 だって、・・・。 此処へ来たのは言い合いをするためじゃない。さあ、教科書を持って来なさい。 今は嫌。 それじゃ帰る。 だめ!・・・待って!・・・待って。 正月は無理だけど、あと一月、できるだけ寄るようにするよ。それで良いね? それだけじゃ、嫌。 それ以上の約束はできないんだ。 -Mar/29/1998-
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