[小説 時] [118 手続] |
118 手続
理由は何だ?一身上の都合です。 それじゃどう云うことか解らんな。これでも忙しいんだ。訳の分からない話に付き合っていられる程暇じゃない。ちゃんと説明してくれ、簡潔にな。 もっと早く片付けておくべきことを、今まで延ばし延ばしにして来ました。それを取り返しの付く内に整理したい、・・・それが理由です。 何を言っているのか、さっぱり解らんよ。 そうですね。至って個人的なことですから、・・・。 もう少し、解り易く説明してくれないか? 込み入った事情があります。それを僅かな時間で説明するのは非常に難しいことです。理解して戴くのは、恐らくそれ以上に難しいだろうと思います。 聞いてみないことには、分からんよ。 残念ですが、その心算はありませんし、その必要もないと思っています。 それは君の判断することじゃない。わたしが判断する。 誰が判断すべきかと云ったことを、議論する必要がある問題だとは思えません。 仮に、君の意志を上司に伝えなければならなくなった時には、当然、今と同じ質問がわたしに向けられるんだ。それにどう答えれば良い?・・・理由も聞かずに受け取る訳にはいかんだろう? それ位のことは理解して欲しいね。君の個人的な話に興味がある訳じゃない。尋ねられた時に説明できる程度の話が聞ければ、それで良いんだよ。 これは、わたしが一年半と云う時間を費やして、やっと辿り着いた結論なんです。 そうだろうな。だが、それだけで納得すると思うか? 無理なことをお願いしている心算はありません。只、これを受け取って戴いて、他の書類と同じように処理して戴ければ、それで済んでしまうことです。 君が此処に来てから、もう十年以上になる。こう云う問題を解決するために必要な手続きがどんなものか、知っている筈だ。 -Apr/5/1998-
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