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[小説 時] [119 根拠]

119 根拠

 わたしが何を望んでいるかと云うことは、理解して戴けると思っていました。
 それだけじゃ済まないと言ってるんだよ。
 何故ですか?・・・第三者には解決できないことが分かっている問題を、何故説明する必要があるんですか?・・・それが辞めるための必要条件だと云う根拠は何ですか?
 君の此処での十年は、無駄だったと云うことになるな。
 わたしなら、辞めようとする人間を引き留めたりはしません。仮に、思い留まらせることができたたとしても、お互いに得るものは何もないだろうと思っていますから、・・・。
 引き留めようとしている訳じゃない。
 良かった。・・・それで、十年が無駄にならずに済みました。
 辞めてどうする心算だ?
 先のことは何も考えていません。今は、先に進むための障害になっているものを、一つ一つ片付けたいと考えているだけです。・・・これが、最初の一つです。

 ご両親は元気か?
 えっ?・・・いえ。・・・それが何か、関係がありますか?
 いや、何でもない。
 どうしても理由が必要でしたら、家を継ぐ準備と云うことではどうでしょうか?
 実際にはどうなんだ?
 兄が代わりに継いでくれることになっています。わたしには、とても勤まりそうもありませんから、・・・。
 長男だったな?
 ええ。名前だけですが、・・・。
 そうか、・・・どうしても話せないという訳だな。

-Apr/5/1998-

・・・つづく・・・



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