[小説 時] [120 頑固] |
120 頑固
まだ日付を入れてありません。何時でも良いと云うことなのか? いえ、できるだけ早くお願いします。 約束はできんな。 止む得ないことだとは思いますが、・・・その返事を何時までも待つことはできませんので、それだけはご了解戴きたいと思います。 そこまですると、退職じゃなくて解雇扱いになるかもしれんよ。 どちらでも、同じことです。 同じじゃないさ。 いえ、・・・。 君の考えている期限は何時だ? 年内です。 それは無理だろう。もう幾らもないじゃないか。・・・増してや、この時期だ。 その点は申し訳ないことだと思っています。 そうか。・・・取り敢えずこれは預かっておくが、そう簡単にはいかないだろうな。それは覚悟しておいてくれよ。 ご迷惑をお掛けします。 そうだな。この忙しい時期に、厄介な仕事が増えた。・・・それにしても、君がこんなに頑固だとは思ってもいなかったよ。 恐らく、それは未決の箱に収まるに違いない、そして、箱の底に張り付くまでに、それ程の時間を必要とはしないだろう、・・・。しかし、その儘で済むことはない、・・・。 もう僅かだった。数日も経てば年が明ける、自分の歩幅さえ確かなら、それは間違いなくやって来る、・・・。誰もがそれを待っていた。 その年の最後の日も、会社に戻ったのは、辺りが暗くなってからのことだった。明りを付け、暖房を入れた。しかし、一旦冷え切った部屋は容易に暖まらなかった。電話を残して全てが片付けられた部屋で、一人抽出しの中の整理を始めた。 -Apr/5/1998-
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