[小説 時] [121 懇願] |
121 懇願
ひどく寒い日だった。明日からの数日は、幾らか温かい日が続くと云う予報が、信じられない程だった。整理は、なかなか進まなかった。棄て切れないものの山ができた。 一月程も前の不調に終わった話し合いのことが、頭から離れなかった。二年以上もの間待たされ続けた挙句、ついに納得できる説明を聞けなかった父親の苛立ったような顔が迫って来た。傍らで泣き出した娘、・・・。 一体、どうすることができだろうか、・・・。全てを話す、そして、縺れてしまった結婚話の縒を戻すか、改めてもう暫くの猶予を懇願するか、その何れかだった、だが、その結果は、何も知らされずに長い間待ち続けた女を巻添えにしてしまうか、何の手段もない女に際限なく待つことを強いるか、その何れかに違いない、・・・。 俯いた儘、頭を上げることができなかった。只ひたすら耐えるだけの、惨めで苦しい一時間だった。しかし、果して、それ以外の選択肢は本当に無かったのだろうか、・・・。 できるだけ、待って欲しい。 もう良いのよ。 もう少しなんだよ。 一年前にも、聞かされたわね。 悲しませたくない。 何故、今更そんなこと・・・。 もう無理を言えないのは解っている。只、どうしても、・・・。 そうね。 -Apr/26/1998-
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