[小説 時] [127 湯気] |
127 湯気
冷え切った身体は湯に中で融けるようだった。窓を開けると、冷たい空気と明るい光が流れ込んで来る、湯気が立ち込める、木の枝に積もった雪が振り落とされて、その度に大きな音を立てる、・・・。他には何の音もしなかった。長い間、雪が降ればと考えていた。その雪は降った。これで自分は立ち上がることができる、・・・。だが、雪は融け始めていた。 仕事は忙しいの? そうだね。でも何とか片付けて来たよ。お陰で、遅くなったけど、・・・。 景気はどうだ? 悪くはないけど、お父さんのところ程じゃない。・・・工事の方は順調なの? 今年は雪が多くて、予定よりも大分遅れ気味だな。 大丈夫。春になれば必ず融けるよ。何時までも積もった儘じゃない。 今までなら、それも立派な言い訳だが、今回だけはそう云う訳にいかんだろうな。 苦労が多そうだね。 それだけじゃないんだよ。 その話はするな。 でも、お父さん、・・・。 お雑煮は? もう少し後にするよ。・・・まだ他に、問題がありそうな言い方ですね? 気にするな。大したことじゃない。 なかなか気の利いた噂があるらしい、・・・叔父さんから聞いたよ。そのことでしょう? -May/31/1998-
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