[小説 時] [148 授業] |
148 授業
改めてお聞きしますが、僕の判断は、正しかったと思いますか?今更どうしてそんなことを、他人に尋ねたりなさるんですか?・・・それが一番だと思われたんでしょう? いや、・・・今では、後悔していますよ。よく考えてみれば、随分残酷な話でしたからね。もっと、他にできることがあったのかもしれません。もう今となっては、遅過ぎるんでしょうが、・・・。そう思いませんか? そうでしょうか?・・・誰にでも、後悔していることはあると思いますが、・・・。 あなただったらどうしたかを、聞かせて貰えませんか? ・・・高校の頃、自分の思い通りにできる人がとても羨ましくて、わたしも、一度だけ、あなたの真似をしてみたことがあるんです。でも、だめでしたね。見つかって叱られました。 何をしたんです? 机と椅子を物置に隠して、屋上へ行って、・・・。教室の窓からでは無理でも、屋上からなら飛べるかもしれない、って・・・。でも、誰にでも飛べるとは限らないんですよね。 そうでしたか。そんなことがあったなんて、全く知りませんでした。 此処にいらっしゃるのは、その決心をしたからなんでしょう?・・・もう、先生が捜しに来る心配はないんです。授業は始まっているんですから、・・・。それとも、今から教室へ戻りますか? それが、・・・答えですか? ・・・もうすぐですから、ゆっくりなさって下さい。 もうすぐ?・・・僕は少しも急いでいない。 お帰りの車をお呼びしてあるんですよ。・・・ご迷惑でなければ、途中まで乗せて戴きたい方がいらっしゃるんですが、よろしいでしょうか? 何人ですか? ・・・勿論、お一人です。 外には? まだ何人かおいでになりますが、よろしいんですか? いや、あなたの云う通りにしましょう。・・・で、飛べると思いますか? ええ、あなたなら、きっと、・・・。 -Dec/20/1998-
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