[小説 時] [166 勘定] |
166 勘定
終わった、・・・長い間付けていた勘定を、やっと清算することができた、それはこれまでの自分の希望の全てだった、そして、それこそが自分の希望の結果だった。だが、・・・掌の中に残った果実の思いの外の小ささが、無闇に腹立たしかった、・・・こんな筈はない、・・・今までに棄ててしまったものの代償として、これは何と云う貧弱さだろうか、・・・。寒くて堪らなかった。静かだった。鉛筆を弄びながら執拗に話を聞こうとする警察官の声が、殆ど聞こえなかった。 気が付いた時には車の中にいた。 雪は、頻りに走る車の窓を叩いた。・・・これで全てが終わったのだ、・・・と。 帰って、休みたいよ。 話ができるのか?・・・眠っているのかと思ったよ。 眠れる訳がない。 そうだろうな。 酒が、欲しい。 良いよ、それ位のことなら、・・・。 何処へ行く心算だ? 一旦戻る。 あそこは嫌だ。 まだ、後片付けが残っているんだよ。 降りたくない。 それなら、家まで送らせよう。 それも嫌だ。 好きにすれば良いさ。 -Oct/3/1999-
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