[小説 時] [168 迷惑] |
168 迷惑
どうやら、今夜は帰れそうもない。どうかしたの? 別に、・・・何もないよ。 だって、帰れないこと位で電話をして来たことなんか、一度もなかったじゃない? そうだったかな。 そんなことで電話をして来るなんて、何かおかしいわよ。 心配しないで、・・・。ちょっと人が恋しくなっただけだから、・・・。 それじゃ相手が違うんじゃない?・・・酔っているんでしょう?・・・もう、それ以上飲むのは止めなさい。 そうするよ。 泊まるのは構わないけど、他人に迷惑を掛けるようなことだけはしないでね。 分かった。・・・おやすみ。 男の目をむいた顔が迫って来た。・・・あの儘歩き続けていたら、どうなっていただろうか、・・・。次第に男の酔いは醒め始める、それに比例して自分の決心は萎える、・・・そして、果たせずに別れることにでもなれば、何時になるかは分からない次の機会を、待てるかどうかは分からない次の機会を、待たなければならないことになる、それが可能なことだとは思えない、その「時」が再び巡って来るとは思えない、・・・。 しかし、もう、待つ必要はなくなった、・・・これで良い、これで、良い、・・・。 -Oct/3/1999-
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