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[小説 時] [170 蝸牛]

170 蝸牛

 これだけのことがあった後に、これだけの酒で、眠れると思うか?
 できるかどうかは、お前次第だよ。只、明日のために自重しなければならない夜があることだけは、確かだろうな。それが今夜だと云うことも、ね。
 もうこれ以上は、何も起こらないさ。・・・だから、明日のことを心配する必要もない。
 そうかな?
 分かったよ。そうしよう。・・・只、この分だけは手酌にさせてくれよ。
 大丈夫ですか?
 好きにさせましょう。

 目を醒ますと、大きく撥ね上げた雪見窓からは、新しく積もったばかりの白い雪と、抜けるような青空が見えた。

 何が変わったのだろうか、昨日の朝と何処が違っているのだろうか、・・・。

 お目覚めですか?
 おはようございます。
 おはようございます。
 ・・・築山に雪みちて、・・・神、そらに知らしめす、・・・。すべて世は事も無し。
 素適ね。
 そうですね。
 そういえば、その詩集の貸出カードに、あなたの名前が書いてあったわね。
 はっきりとは覚えてはいませんが、そう言われれば、書いたかもしれませんね。
 あったわよ。それを見た時、不思議な人だなと思ったことを、今でも覚えてるもの。・・・食事は如何ですか?
 いえ、・・・。寒いですか?
 ええ、とても。・・・まだまだ、揚雲雀や蝸牛には無理でしょうね。

-Oct/3/1999-

・・・つづく・・・



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