[小説 時] [173 確信] |
173 確信
今の内に、話しておきたいことがある。どんなことだ? 聞かれるのは、多分、昨日のことばかりじゃない。かなり微妙な質問もあるだろうな。その前後のこと、この部屋で話したこととか、家庭のこと、会社のこと、友人のこと、彼女のことも、或いは、例の事故のことも、ね。だが、これだけは覚えていて欲しい。・・・どんな質問にも、お前が確信できること以外は、口にしない、・・・。 当然だね。知らないことは話しようがない。 いや、想像や憶測を事実だと思い込んでしまうことは良くあるんだ。しかも、一旦思い込むと、なかなか抜け出せない、そうだろう? 特に、混乱している時には、ね。 心配するなよ。お前や彼女のことは、決して話さない。 そんなことを言っているんじゃない。隠しごとをしたり、嘘を付いたりする必要はないんだ。お前が知っていることでそれが事実なら、その通り話せば良い。只、少しでも自信がなかったら、無理に答えない方が良いと言ってるんだよ。 何をそんなに心配してるんだ? あの事故があってからのお前は、どう見ても少しおかしい。・・・自分では、なかなか気付けないことなのかもしれないけど、ね。 そうかな。・・・そんなことは、考えてみたこともなかった。 そうだろうさ。だからこそ、心配なんだよ。 何を言いたいのか、さっぱり解らないね。 これまでのことを無駄にしてしまうようなことは、して欲しくないだけだ。彼女のためにも、ね。・・・口を開くのは、話しても良いことなのかどうか、話したことに責任が持てるかどうか、それを良く考えてからにしくれ。 どうも良く分からないが、取り敢えず、礼を言うよ。ありがとう。 今、話したことを忘れないでくれれば、それで良いんだ。・・・すぐに済むよ。 是非そうあって欲しいね。 -Jan/22/2000-
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