[小説 時] [187 立札] |
187 立札
少し歩きたい。車は要るか? いや、歩いて帰るよ。・・・少し遅くなるかもしれないけど、心配しないで、・・・。 あまり遅くならないようにな。この様子じゃ相当積もりそうだ。 暗がりの中に炙り出されたような駅舎の前には、出発する列車毎の立札が立てられていた。その立札の前に、穏かだった正月を過ごした人達が列をなしていた。一様に大きな荷物を持ち、一様に満ち足りた表情をした人達だった。既に出た筈の列車の立札が残っていた。その前にも、何人かの人が待っていた。雪は盛んだった。 何を待っているのだろうか、・・・この雪や寒さに耐えるために支払ったものは、待つことで手に入れることができるもに見合うものなのだろうか、・・・。 -Jul/15/2000-
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