【日本語を読むための漢字辞典】 『当用漢字・常用漢字新字体・簡化字ルーツの辞典』
当用漢字・常用漢字について、新字体を中心に、中国の字典及び戦前までの日本の字典でどのように扱われているか、また中国の簡化字についてもふれる。
『中華字海』から「見日本《常用漢字表》」と引用しているものは、とりあえずの調査といったレベルと思ってください。
全体的に調査不十分なものが多く、文字数も少ないのですが、将来的には名前負けしない辞典にしたいと思っています。
【万】
中国の簡化字もこの字で、『簡化字源』は「悠久的簡体字」として「《玉篇》:“万,俗萬字。十千也”。《干禄字書》:注“万”、 “萬”二字 “并正”。《集韻》:“万,数也。通作萬”」と引用し、また漢代の碑に見られることを示す。『宋元以来俗字譜』所収の『古列女傳』・『京本通俗小説』・『古今雜劇三十種』・『朝野新聲太平樂府』・『金瓶梅』など12種全てに同じ字形が見られる。
【両】
中国の簡化字とは字形が異なるが、『宋元以来俗字譜』所収の12種のうち『目蓮記彈詞』・『金瓶梅』など5種に同じ字形が見られる。
【乱】
中国の簡化字もこの字で、中国においても「亂」の異体・簡体のうち最も普通に用いられた字で、『簡化字源』に示された字形を見ると、北魏時代の碑に見られ、隋・当時代から今日に至るまでこの字形が書かれている。字書も同様で、『簡化字源』に「唐代的《干禄字書》、宋代的《廣韻》、明代的《正字通》和清代的《康煕字典》都収録了“乱”字,多注爲“俗字”。」とある。
【会】
中国の簡化字もこの字で、『簡化字源』に示された字形を見ると、漢代から草書体には大同小異な字形が見られ、これを楷書化して簡化字が作られている。
【仏】
『漢語大字典』に「同“佛”。《改併四聲篇海・人部》引《川篇》:“仏,西域聖人,有六通也。” 《正字通・人部》:“仏,古文仏。(下略)”」とある。『名義抄(観智院本)』に「俗佛字又見別字」とある。
【伝】
『中華字海』は『白虎通』から引用するが「音義未詳」とする。日本の文字とは関係ないと考えられる。「傳」の和製異体字か。『漢韓最新理想玉篇』に「傳略字」とあるのは、日本の用法が伝わったものか。
【体】
中国の簡化字もこの字で、『宋元以来俗字譜』所収の12種のうち『京本通俗小説』・『古今雜劇三十種』・『朝野新聲太平樂府』など10種に同じ字形が見られる。
【価】
『国字の字典』が『文教温故』を引き「西仏」の意の国字とする。『名義抄(観智院本)』に「ユク」、『字鏡鈔』に「火季反 ユク」、『篇目次第』に「サ反 ユク」とある。『漢語大字典』が『改併四聲篇海』を典拠に「音似。像」、『中華字海』が『字彙補』を典拠に「同似」とする。『名義抄(観智院本)』などの「ユク」の訓があるものは、「価」の「にんべん」を「ぎょうにんべん」にした文字の異体字、常用漢字の「価」は「價」の異体字から採用されたものといずれも意味的にも字源的にも異なると考えられるが、国字とするのは問題がある。
【党】
中国の簡化字もこの字で、『宋元以来俗字譜』所収の12種のうち『朝野新聲太平樂府』・『金瓶梅』など4種に同じ字形が見られる。『簡化字源』に「原来的“党”字用于:(一)我国古民族名。《集韻》:“党,党項,虜名”。“党項”,是羌人的一支,在北宋時曾建立西夏政権。(二)姓氏名。(下略)」とある。中国において「党」の字が別字として存在し、「(一)古民族名。(二)姓氏名。」としての用法があり、元代にいたり「黨」の俗字として用いられたことがわかる記述があるのは、漢和辞典においては『大漢和辭典』のみで、中型のものでは、『広漢和辞典』・『大字源』・『大漢語林』には「姓氏名」の記述がなく、『新大字典』には「党」の字本来の字義も中国で俗字として使われることも欠き、全く不適切である。小型のものにはそこまでの解説を求めないが、常用漢字の字形は、中国での俗字としての用法が日本にもたらされたことによることは載せるべきである。
【処】
中国の簡化字とは字形が異なるが、『簡化字源』に「南北朝的《玉篇》也収録了這個字(見“処”)」とあり、『宋元以来俗字譜』所収の12種のうち『古列女傳』・『京本通俗小説』・『古今雜劇三十種』・『朝野新聲太平樂府』・『金瓶梅』など9種に同じ字形が見られる。
【画】
中国の簡化字とは字形が異なるが、『宋元以来俗字譜』所収の『朝野新聲太平樂府』などに同じ字形が見られる。
【勧】
中国の簡化字とは字形が異なるが、『宋元以来俗字譜』所収の12種のうち『朝野新聲太平樂府』など2種に同じ字形が見られる。
【区】
中国の簡化字もこの字で、『漢語大字典』・『中華字海』に「區的簡化字」とあるが、『中華大字典』にはない。『宋元以来俗字譜』所収の『古今雜劇三十種』に似た字形として[区-メ+ヌ]がみられるが「区」はなく、偏などにある場合も同様である。『簡化字源』に「1935年制訂的《手頭字第一期字彙》首次提出與現行簡化字完全相同的“区”字」とあり、中国においては、ごく新しい字形であることが推量される。
【医】
中国の簡化字もこの字で、『宋元以来俗字譜』所収の12種のうち『京本通俗小説』・『金瓶梅』など6種に同じ字形が見られる。
【圧】
【参】
中国の簡化字もこの字で、『簡化字源』に示された字形を見ると、唐代の草書・宋代の行書には楷書化するとこの字になると考えられるものがある。
【号】
中国の簡化字もこの字で、
【台】
【囲】
『中華字海』が『篇海類編』を典拠に「音通。策」、日本の『同文通考』を典拠に「音圍。同圍」とする。後者の意味に対する典拠がたまたま見つからなかったのであろうか。日本から伝わった用法とも考えられる。
【国】
中国の簡化字もこの字で、『簡化字源』に示された字形を見ると、南北朝の碑にほとんど同じ字形が見られ、唐代の敦煌変文には全く同じ字形が見られる。「國」の異体字に関する詳しい研究論文に笹原宏之著『字源説、字源意識、文字に対する意識が字体に与えた影響-「國」の異体字に関して-』がある。この論文でふれられる「國」の異体字は、中国典拠のものが25種類、日本典拠のものが25種類、重なりを省けば35種類で、「國」を含めれば36種類が考察の対象とされている。重複するものの一部は、日本典拠のものの方が中国より古いが、ほとんどは中国からもたらされたもので、「国」もそのひとつである。中国では、六朝時代頃までさかのぼれるが、日本では平安時代までということである。全くの漢字であると考えられる。
【塀】
『名義抄(観智院本)』に「俗屏字 必郢反」、『字鏡鈔』に「ヘイ 屏同 カクル カキ サク カラス カハヤ マカキ サヘル ニカウ ヘタツ オサヘ シリソク ノソム」、『運歩色葉集』・『大谷大学本節用集』・『永禄二年本節用集』・『和字正俗通』(借字一)に「ヘイ」、『新刊節用集大全』に「へい」とある。『龍龕手鑑』に「必郢反」とあるほか、『漢語大詞典』に「人名用字。明代有朱邃塀。《明史》」とある。『漢語大詞典』の人名例は影響が考えられないが、『龍龕手鑑』は日本の音「ヘイ」と反切が一致しており、影響が考えられる。字音をそのまま訓としたものか。国訓と考えられるが、中国で字義が失われており、確たる事はいえない。『字通』にも「字は『龍龕手鑑』にみえ、人名に用い、明史に「朱邃[塀(旧字体)]」という名がある。」とある。
【塩】
『中華字海』に「同“鹽”。見日本《常用漢字表》」とある。中国の簡化字は、[(圦-入+卜)*皿]である。『簡化字源』に「最常見的一種簡体」、『中華字海』に「同“鹽”。見《玉篇》」とある[(塩-皿)*皿]と、『簡化字源』に「別一種較少見的、流傳在中国南方的簡体」とある[圦-入+卜]を結合して作られたものである。この字が最も早く見られるのは、『簡化字源』に「《常用簡字表》(1936年)」とある。[(塩-皿)*皿]は、『廣韻』・『龍龕手鑑』にも見られ、『宋元以来俗字譜』所収の12種のうち『古列女傳』・『古今雜劇三十種』・『朝野新聲太平樂府』など6種に同じ字形が見られる。この字が変形して「塩」が作られたものと考えられる。「皿」が下部全体にあるか、[圦-入]の下にはないかという差のみであり、和製異体字といえるかということも疑問である。
【塁】
【壱】
『中華字海』に「同“壹”。見日本《常用漢字表》」とある。
【売】
『中華字海』に「同“賣”。見日本《常用漢字表》」とある。『宋元以来俗字譜』にも同じ字形はない。『簡化字源』には最後に同じ字形があるが、解説がつけられていない。一つ前の文字の典拠が「1935年的《簡体字表》」とあることから、『中華字海』と同じく「見日本《常用漢字表》」とでもあるべきところなのかも知れない。
【声】
中国の簡化字もこの字で、『宋元以来俗字譜』所収の『古列女傳』・『京本通俗小説』・『古今雜劇三十種』・『朝野新聲太平樂府』・『金瓶梅』など12種全てに同じ字形が見られる。
【変】
【姉】
『中華字海』に「音義待考。字出《ISO-IEC DIS 10646通用編碼字符集》」とある。『康煕字典』など女偏の4画に掲出されながら「姉」の字形をとるものがある。和製異体字というわけではない。
【嬢】
『中華字海』に「同“孃”。見日本《常用漢字表》」とある。
【実】
『中華字海』に「同“實”。見日本《常用漢字表》」とある。『宋元以来俗字譜』所収の12種のうち簡化字と同じ字形のものが『京本通俗小説』・『古今雜劇三十種』・『朝野新聲太平樂府』など8種にあるが、常用漢字と同じ字形のものはない。『簡化字源』にも同じ字形のものはないが、隋の書家のものなどかなり似た字形のものがあり、和製異体字ではなさそうである。
【宝】
『中華大字典』に「俗寶字」、『漢語大字典』・『中華字海』に「寶的簡化字」とある。これらには典拠がないが、『宋元以来俗字譜』が調査対象とした12種の文献全てに「寶」の意で現れてくるポピュラーな俗字といえる。
【寝】
中国の簡化字もこの字で、『宋元以来俗字譜』所収の12種のうち『朝野新聲太平樂府』・『金瓶梅』など3種に同じ字形が見られ、『簡化字源』に示された字形を見ると、隷書体ではあるものの漢代の碑にこの字が見られる。
【寿】
中国の簡化字とは僅かながら字形が異なるが、『宋元以来俗字譜』所収の12種のうち『古列女傳』・『朝野新聲太平樂府』・『金瓶梅』など5種に同じ字形が見られる。
【専】
『中華字海』に「同“專”。見日本《常用漢字表》」とある。
【将】
『中華字海』に「同“將”。見日本《常用漢字表》」とある。『宋元以来俗字譜』・『簡化字源』にも同じ字形は見られない。和製異体字か。
【尊】
【当】
中国の簡化字もこの字で、『簡化字源』に示された字形を見ると、草書体ではあるものの漢簡にこの字が見られる。『宋元以来俗字譜』所収の12種のうち『京本通俗小説』・『金瓶梅』など4種に同じ字形が見られる。
【労】
中国の簡化字とは字形が異なり、『中華字海』に「同“勞”。見日本《常用漢字表》」とある。『宋元以来俗字譜』にも同じ字形は見られない。
【単】
中国の簡化字とは字形が異なるが、『簡化字源』に示されたものを見ると宋代のものにほとんど同じ字形がある。
【属】
中国の簡化字もこの字で、『簡化字源』に「“属”字是一個具有二千多年歴史的古代簡体字」とあり、漢代の碑などから楷書化すればこの字形になる字が示されている。また同書には「現行簡化字相同的“属”字」が歴代の字書、韻書にあるとして「《玉篇》《廣韻》《龍龕手鑑》《正字通》《康煕字典》」をあげている。『宋元以来俗字譜』は、所収の12種のうち『古列女傳』・『京本通俗小説』・『古今雜劇三十種』・『朝野新聲太平樂府』など9種に同様の字形が見られる。
【巻】
『中華字海』に「同“[巻-己+巳]”。見日本《常用漢字表》」とある。
【帰】
中国の簡化字とは字形が異なるが、『簡化字源』にほとんど同じ字形で「始見于投打異変文的一種」とあり、『宋元以来俗字譜』には全く同じといってよい字形が『古列女傳』・『京本通俗小説』・『古今雜劇三十種』など9種に見られる。
【広】
中国の簡化字とは字形が異なり、『中華字海』に「同“廣”。見日本《常用漢字表》」とある。『宋元以来俗字譜』・『簡化字源』にも同じ字形はないが、『中文大辭典』に「廣之簡字」とある。和製異体字か否か難しいところである。
【庁】
中国の簡化字とは字形が異なるが、『宋元以来俗字譜』所収の12種のうち『古今雜劇三十種』・『全相三國志平話』の2種に同じ字形が見られる。
【応】
『中華字海』に「同“應”。見日本《常用漢字表》」とある。『宋元以来俗字譜』・『簡化字源』にも同じ字形はない。和製異体字か。
【廃】
『中華字海』に「同“廢”。見日本《常用漢字表》」とある。
【強】
『中華字海』に「同“[強-ム+口]”。見日本《常用漢字表》」とある。
【弾】
『中華字海』に「同“彈”。見日本《常用漢字表》」とある。
【徳】
『中華字海』に「同“德”。字見《宋元以来俗字譜》」とある。
【断】
中国の簡化字もこの字で、『簡化字源』に、「早在漢代,已有近似現行簡化字的“断”字了」また「在晋代的《晋[神-申+巳]后土》殘碑中,已有與現行簡化字完全相同的隷書“断”字了」とある。字書にも早くから見られ、同書に「顧野王撰的《玉篇》注:“断同斷,俗”」とある。『宋元以来俗字譜』所収の12種全てに同じもしくは同様な字形が見られる。
【旧】
中国の簡化字もこの字で、『宋元以来俗字譜』所収の12種のうち『京本通俗小説』・『古今雜劇三十種』・『朝野新聲太平樂府』・『金瓶梅』など10種に同じ字形が見られる。『簡化字源』に「“旧”字首見于唐代《干禄字書》,注爲“臼”字的 “俗字”。」とある。
【脳】
『中華字海』に「同“腦”。見日本《常用漢字表》」とある。『宋元以来俗字譜』・『簡化字源』にも同じ字形はない。
【来】
中国の簡化字もこの字で、『簡化字源』に漢代の碑にあることが示され、また「在晋代以后的楷書、行書中,“来”的出現率甚至超過了“來”字。」とある。『宋元以来俗字譜』所収の12種のうち『京本通俗小説』・『古今雜劇三十種』・『朝野新聲太平樂府』・『金瓶梅』など10種に同様の字形が見られる。
【枠】
『中華字海』に「同“樺”。見《日文漢字対照表》」とある。『字通』に「古く〔新撰字鏡〕に「[竺-二+隻] 和久(わく)」とみえる。枠の字は、〔滑稽本東海道中膝栗毛、五下〕などにその字がみえるが、字源は明かでない。」とある。
【栄】
『中華字海』に「同“榮”。見日本《常用漢字表》」とある。
【梅】
中国の簡化字とは字形が異なるが、『中華字海』に「同“[梅(旧字体)]”。見《篇海》」とある。
【桜】
『中華字海』に「同“櫻”。見日本《常用漢字表》」とある。
【桧】
中国の簡化字もこの字で、旁を草書体から楷書化した簡化したものである。「会」参照。
【気】
『日本語の現場第2集』に「『当用漢字の新字体』の著者、山田忠雄さんにはわからなかった「気」の出典を明らかにしたのは林さん(著者注=元国立国語研究所長の林大氏)だ。山田さんは(中略)「氣」の略字として(中略)「気」が『漢字ノ研究』(中略)に出ていることは知らなかったという。」とある。『中華字海』には「同气」とあるのみで、出典がないが、日本の常用漢字表から引いた場合は、その旨記してあるので、字書に載ることの無かった民間俗字として、中国でも存在した文字なのであろうか。
【浅】
中国の簡化字とは字形が異なるが、『宋元以来俗字譜』所収の12種のうち『京本通俗小説』・『古今雜劇三十種』など4種に同じ字形が見られる。
【渓】
『中華字海』に「同“溪”。見日本《常用漢字表》」とある。
【渕】
中国の簡化字とは字形が異なるが、『中華字海』に「同“淵”。字見隋《唐世榮墓志》」とある。
【満】
『中華字海』に「同“滿”。見日本《常用漢字表》」とある。
【滞】
『中華字海』に「同“滯”。見日本《常用漢字表》」とある。
【為】
中国の簡化字とは字形が異なるが、『中華字海』に「同“爲”。見《玉篇》」とある。
【献】
中国の簡化字もこの字で、『簡化字源』に「“献”字是一箇古簡体字,它開始出現在漢代。金代《改併四聲篇海》:“献,音獻”。明代《字彙》:“献,俗獻字”。」とあり、同書に示された漢簡の中に隷書体ながらほとんど同じといってもよい字形がある。『宋元以来俗字譜』所収の12種のうち『古列女傳』・『京本通俗小説』・『古今雜劇三十種』など6種に同じ字形が見られる。
【猟】
『中華字海』に「同“獵”。見日本《常用漢字表》」とある。
【畳】
『日本語の現場第2集』に「当用漢字表に採用された文字の中で唯一全く新に作られた字体の漢字。活字字体整理協議会案であった「疂」、これを「畳」にすべきだと字体委員会で提案したのは、カナモジカイ理事長の松坂忠則委員である。」とある。当用漢字制定以前に使われていた「畳」の字体を見ると「疂」の[軣-車]が無いものもあるが、[畳-田]の部分がより簡略化されていたりして、「畳」と全く同じ字体のものは、今のところ発見できていない。ご存じの方は、典拠とともにお知らせいただきたい。『中華字海』に「同“[疊-(疊-宜)+(桑-木)]”。見日本《常用漢字表》」とある。「疊」の和製異体字には間違いないのであろう。『弘治二年本節用集』・『永禄二年本節用集』・『両足院本節用集』に「疂 タヽミ」、『堯空本節用集』に「[疂-且+互] タヽミ」とある。
【窃】
中国の簡化字もこの字で、『簡化字源』に「“窃”字首見于東晋王[曦-日]之的手迹」とある文字は、楷書化すれば近い字形となると考えられ、明代には全く同じ字形が見られる。
【絵】
中国の簡化字もこの字で、旁を草書体から楷書化した簡化したものである。「会」参照。
【継】
中国の簡化字とは字形が異なるが、『簡化字源』に示された字形を見ると、楷書体で普通に書かれる、「糸」の下の部分が、点3つになった字形が南北朝の北魏の碑に見られる。『宋元以来俗字譜』所収の12種のうち『古列女傳』など3種にもそのような字形があり、『金瓶梅』には「継」の字形である。
【聡】
中国の簡化字とは字形が異なるが、崩した字には早くからみられ、完全に同じ字形も、『簡化字源』に「唐[初-刀+者]逐良(見“聡”)」とある。
【薬】
中国の簡化字とは字形が異なるが、『宋元以来俗字譜』所収の12種のうち『古列女傳』・『全相三國志平話』・『金瓶梅』など6種に楷書体と明朝体などの活字体との書体差のみと考えられるほとんど同じ字形が見られる。
【蚕】
中国の簡化字もこの字で、『簡化字源』に「“蚕”字始見于我国最早的一部解釈字義的傳著―《尓雅》」とある。
【装】
中国の簡化字もこの字で、
【観】
中国の簡化字とは字形が異なるが、『宋元以来俗字譜』所収の12種のうち『古今雜劇三十種』・『朝野新聲太平樂府』など3種に同じ字形が見られる。
【触】
中国の簡化字とは旁の字形は同じで、偏が日本では字典体、中国では伝統的な楷書体である書写体によるという差があるのみであり、和製異体字ともいえない。『宋元以来俗字譜』にはこの字と同じ字形はないが、簡化字と同じ字形は、『嶺南逸史』にある。
【訳】
『中華字海』に「同譯。見日本《常用漢字表》」とある。和製異体字か。『玉篇要略集』に「コトハ フ」、『音訓篇立』に「ワカル」とある。同形別字か。
【読】
『中華字海』に「同“讀”。見日本《常用漢字表》」とある。
【転】
『中華字海』に「同“轉”。見日本《常用漢字表》」とある。
【軽】
中国の簡化字とは字形が異なるが、『宋元以来俗字譜』所収の12種のうち『朝野新聲太平樂府』・『金瓶梅』など4種に同じ字形が見られる。
【辞】
中国の簡化字もこの字で、崩した字には早くからみられるが、完全に同じ字形は、『簡化字源』に「宋元以来多種通俗文学刻本(見“辞”)」とある。『宋元以来俗字譜』所収の12種のうち『古今雜劇三十種』・『朝野新聲太平樂府』・『金瓶梅』など7種にほとんど同じ字形が見られる。
【遅】
『中華字海』に「同“遲”。字見《敦煌俗字譜》」とある。
【鉄】
『宋元以来俗字譜』所収の12種のうち『古今雜劇三十種』・『朝野新聲太平樂府』・『金瓶梅』など9種に同じ字形が見られる。中国の簡化字はこの字の「金偏」が簡略化されたものである。
【銭】
『宋元以来俗字譜』所収の12種のうち『朝野新聲太平樂府』・『金瓶梅』など5種に同じ字形が見られる。中国の簡化字はこの字の「金偏」が簡略化され、旁も1画少ない。
【関】
中国の簡化字とは字形が異なるが、中国でも最も普通に書かれた字形で、『宋元以来俗字譜』所収の12種のうち『古列女傳』・『古今雜劇三十種』・『朝野新聲太平樂府』など8種に同じ字形が見られる。簡化字は、この字形から「門がまえ」をとって作られた。
【隠】
中国の簡化字とは字形が異なるが、『宋元以来俗字譜』所収の『取經詩話』に同じ字形が見られる。
【雑】
中国の簡化字とは字形が異なるが、『簡化字源』に示された字形を見ると、東晋の王献之の楷書及び隋代の墓志銘に同じといってよい字形がある。
【青】
【顕】
中国の簡化字とは字形が異なるが、『宋元以来俗字譜』所収の『朝野新聲太平樂府』に同じ字形が見られる。
【駅】
『中華字海』に「同“驛”。見日本《常用漢字表》」とある。
【麦】
中国の簡化字もこの字で、『簡化字源』に示された字形を見ると、漢代の碑にすでに見られる。
【黒】
【斉】
中国の簡化字とは字形が異なるが、『簡化字源』に「多種異体字和簡体字。其中流行最廣的有兩種」として、簡化字とともにこの字があげられている。
【歯】
中国の簡化字とは字形が異なるが、『簡化字源』に「宋元以来的通俗文学刻本(見“歯”)」とある。
【竜】
中国の簡化字とは字形が異なるが、『簡化字源』に「隋代的《龍藏寺碑》、唐代的敦煌変文和元、明、清的通俗文学刻本採用了一種簡体;日本漢字則採用了后一種簡体。」とある。
【亀】
中国の簡化字とは字形が異なるが、『宋元以来俗字譜』の『古今雜劇三十種』・『朝野新聲太平樂府』など4種にこの字形が見られる。