【日本語を読むための漢字辞典】 『和製漢字の辞典 未定稿』 巻一 |
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中国の簡化字もこの字で、『簡化字源』は「悠久的簡体字」として「《玉篇》:"万,俗萬字。十千也"。《干禄字書》:注"万"、 "萬"二字 "并正"。《集韻》:"万,数也。通作萬"」と引用し、また漢代の碑に見られることを示す。『宋元以来俗字譜』所収の『古列女傳』・『京本通俗小説』・『古今雜劇三十種』・『朝野新聲太平樂府』・『金瓶梅』など12種全てに同じ字形が見られる。 もちろん国字ではないが、和製異体字でもない。
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苗字に[木-(八-ノ)](えだおろし)がある。
W2 110302
[(勺-ノ)-丶+メ*一]ノ沢(うすのさわ)は、山形県東田川郡立川町の地名。『JIS X 0213:2000附属書6(規定)漢字の分類及び配列』(第4水準漢字集合)の「用例及び用例音訓(参考)」に「地名 ウス 山形県[(勺-ノ)-丶+メ*一]ノ沢(ウスノサワ)」とある。『米沢文庫本倭玉篇』に「ジン ウシ」、『玉篇略』に「チウ ウシ」、『同文通考』に「譌字 丑也」とある。『中華字海』に「音義待考。字出《ISO-IEC DIS 10646通用編碼字符集》」とあるが、国字ではなく、「丑」の異体字にすぎない。『大漢和辭典』に「チウ 丑の俗字」、『新大字典』・『大漢語林』・『大修館漢語新辞典』に「チュウ 丑の俗字」、『五十音引き講談社漢和辞典』・『岩波新漢語辞典第二版』に「丑の異体字」、『中文大辭典』に「丑之俗字」とある。web版では、[刃*一]の字形にしていたが、JIS補助漢字・JIS第4水準及び各辞典の字形を参考にして訂正した。
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『大漢語林』が「キ。喜の俗字。喜の草書体に基づく文字。七十七歳を喜寿というのは、この字が七十七にみえることによる。」として国字とする。喜の草書体に基づく文字であれば、[七*(十+七)]・[七*(七+七)]・[ヒ*(ヒ+ヒ)]などがあるにもかかわらず、[(切-刀)△七△七]のみ国字とするのは理由がない。喜寿の説明の「七十七に見える」というのであれば、[七*(十+七)]の方がより適切である。この字形が中国等の草書体にもないとすれば、喜の和製異体字とはいえるが国字ではない。『JIS X 0213:2000附属書6(規定)漢字の分類及び配列』(第3水準漢字集合)に「「喜」の字の草体[七*(七+七)]が「七十七」と分解できるところから」・辞事典」とあるが、「例示字体」・「用例及び用例音訓(参考)」中の字体ともに[七*(七+七)]であるのは、「「七十七」と分解できる」とするのは、「例示」とか「参考」とかいってみても不適切であることには間違いないと考えられる。「用例及び用例音訓(参考)」には「人名」として[七*(七+七)]代子(キヨコ)・[七*(七+七)]則(ヨシノリ)などがある。「嬉」など旁が「喜」になっている文字は、行書体・草書体を楷書化すれば、同様な字形になり、これらも同じ観点からすると国字とする辞書があっても不思議ではないが、そのような例は皆無である。具体例を示せば、『音訓引古文書大字叢』(異体字一覧)には、楷書体で[好-子+{七*(十+七)}]が「嬉」の異体字として出ており、『江戸版本解読字典』にも『絵入女文通宝袋』・『大日本永代節用無尽蔵』・『女消息往来』から「嬉」の行書体もしくは草書体で引用されているが、旁は全て「喜」のくずし方と同じである。
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『文教温故』に「佛頂の省字」とある。
W4 111101
『世尊寺本字鏡』・『音訓篇立』に「ヒトリ」とある。
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『日本人の作った漢字』が杉本つとむ著『西鶴語彙管見』を典拠に「ならぶ」意の国字とする。
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『歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典』に「鳥坂城鶴[一*{勦-力+(骨旧字体-月+夫)}](とつさかのじょう つるのすごもり)享保6年11月初演」とある。『国字の字典』・『歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典』は「つる」を「鶴」とするが『歌舞伎評判記集成』の影印からすると「靍」が正しい。
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W5c 120301
『以呂波考』に「トキノ合字」、『大字典』に「トキと訓む。片假名トキの合字。」、『大辭典』に「トキ時(中略)〔[中+キ-口]〕は國字。トとキとの合字。」とある。現在はまず使われることがないと思われるが、明治時代には普通に用いられていた。
W5d 120302
『文教温故』に「[中+モ-口](トモ)」、『以呂波考』に「トモノ合字」、『大字典』に「トモと訓む。片假名トモの合字。」、『大辭典』に「トモ(中略)片假名トとモの合字。主に接續助詞のともの宛字に用ふ。」とある。とある。現在はまず使われることがないと思われるが、明治時代には普通に用いられていた。
W5e 120401
『以呂波考』に「ト云ノ合字」、『大字典』に「トイフと訓む。片假名トと漢字の云の合字。何々と云フの義なり。」、『大辭典』に「トユー(中略)トと云との兩字を合わせし國字。と云ふ。」とある。現在はまず使われることがないと思われるが、明治時代には普通に用いられていた。
W5f 120402
『大字源国字一覧』(仮名合字)に「ども」とある。
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『世尊寺本字鏡』に「アヤシ」とある。
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W8 130401
『学研漢和大字典』は「容器の中に食べ物のはいった姿を描いた象形文字。中国固有の丼(セイ)とは関係がない。」として国字とする。このような考え方にたてば、同形であっても意味的に中国のものと完全に異なる場合は、国字とされる可能性が高くなる。「椿(つばき)」など国訓とされる多くの文字について見直しが必要となるが、見直しが行われているようには見られない。「丼(どんぶり)」の字のみのようである。同書のハンディ版『漢字源』は同様の解説をしながら、国字とはせず、「日本語特有の意味」をあらわすマークをつけている。『漢語大字典』は、『説文解字』・『正字通』を典拠に「同"井"。」とするほか、『集韻』を典拠に「投物井中声。」とする。「どんぶり」は国訓である。『JIS X 0221-1:2001(ISO/IEC 10646-1:2000) 』の中国・台湾・韓国の規格にもある。
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『国字の字典』が『譬喩尽』から狂言の名「どぶかっちり」を引き国字とする。
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W8c 140102
『大字源国字一覧』(仮名合字)に「して(〆とは別字)」とある。明治時代までよく見られる字である。「〆」参照。
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(3) 笹原宏之著『メートル法単位を表す国字の製作と展開』が『遠西醫方名物考』を引き「ゲレーン・グレーン」とする。『遠西醫方名物考』の秤量符にこの字があり、「一錢ヲ六十ニ分カチタル其一(中略)和蘭ニ是ヲ傑列印(ゲレイン)ト呼ブ。(中略)Gヲ以テ符號トス。故ニ是ヲ略シテ[氏-一]ニ作ル」とある。字形は、『遠西醫方名物考』にいうように「G」から作られたもので、『遠西醫方名物考』(大阪府立中之島図書館蔵本)によって示すと、親字にあるように第三画が第一画に接してはおらず、第二画に接している。第二画の撥ねと第三画で楷書体の「入」の字のごとくになっている。当辞典の親字の字形は、諸書に掲出されている字形によったが、『遠西醫方名物考』(大阪府立中之島図書館蔵本)を基準にするとかなり不正確なものといえる。正確な字形は、同書を見ていただきたい。同書には、当辞典に取らなかった「ポンド」などもある。ただ「ゲレイン」も含め、外来の単位記号を漢字体にしたものであり、国字と呼ぶべきものであるかは、いささか疑問である。1ゲレインは、1/480オンス(トロイオンス=31.103g)。約0.0648g。
W10 140301
『国字の字典』が『文教温故』を引き「声聞(しょうもん)」の意の国字とする。『同文通考』に「シャバ 佛氏娑婆二合ノ省字」とある。
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『国字の字典』が『譬喩尽』から「[乃#木]頭(ずくにゅう)」と引き、「木菟入(ずくにゅう)・木菟(みみずく)入道」の意の国字とする。
W12 140801
『観智院本類聚名義抄』に「ナツ」とある。
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W14 150301a
『音訓篇立』に「アツマル」とある。「九+九」を参照。
W15 150501
『観智院本類聚名義抄』に「アツマル」とある。『伊京集』に「アツマル」とあり、『国字の字典』が「集まる」意の国字とする。「[九+九]・[旭-日+九]」をなお強めたものか。『音訓篇立』には「ヤム音 ツカム」とある。
W16 150601
『観智院本類聚名義抄』・『字鏡鈔』・『字鏡抄』に「アシタ」とある。「旭(あした)」の異体字か。
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『線音雙引漢和大辭典』(国字)に「デンキ」、『大字典』に「國字 デンキ 電氣の二字を合したる俗字也。最近の字なれば廣く用ひず。」、『大漢和辭典』に「國字 でんき。電氣の二字を合せた俗字。」とあり、『国字の字典』も国字とする。
W16b 150901
『伊京集』に「イソキ」とあり、『国字の字典』が「急ぎ」の意の国字とする。