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[辞典・用語][品質マネジメントシステム(ISO9001)-要求事項 2008年版 解説][4. 品質マネジメントシステム]


4. 品質マネジメントシステム

4.1. 一般要求事項

組織は、この要求事項に従って、品質マネジメントシステムを確立し、文書化し、実施し、かつ、維持することしなければならない。
ISO9001が適用される組織では、ISO9001に合わせて仕事の仕組みや決まりごとを定め(確立)、それが「4.2.1.一般」に該当するものについては文書にし(文書化)、決めた通りに実施し(実施)、状況などが変わった場合には仕組みや決まりごとを見直し、必要であれば改めて下さい(維持)。
また、その品質マネジメントシステムの有効性を継続的に改善することしなければならない。
また、QMSが有効に機能するよう、常日頃から見直し改良して下さい(継続的改善)。
組織は、次の事項を実施することしなければならない。
以下を実施して下さい。
a) 品質マネジメントシステムに必要なプロセス及びそれらの組織への適用を明確にする(1.2参照)
仕事をどのような工程・作業・業務(プロセス)に分けたら良いか、その工程・作業・業務はどの部署が担当するか、を整理して下さい。
一般には、組織図などに示します。除外する部門がある場合は、それを明記します。
b) これらのプロセスの順序及び相互関係を明確にする。
a)で整理した工程・作業・業務の手順や流れ(プロセスの順序及び相互関係)を整理して下さい。
一般には、材料や情報がどこから来て(インプット)、出来上がったもの(アウトプット)がどこに行くか、を図や表にまとめます。
c) これらのプロセスの運用及び管理のいずれもが効果的であることを確実にするために必要な判断基準及び方法を明確にする。
a)b)で整理した工程・作業・業務(プロセス)が、その機能を発揮できるように、判断が必要な場合には、その基準と、判断する人、決めて下さい。
d) これらのプロセスの運用及び監視の支援をするために必要な資源及び情報を利用できる事を確実にする。
各工程が、a)で整理した工程・作業・業務(プロセス)を、b)c)で決められた通りに作業する際に必要となる、人・設備・環境など(資源)を用意し、必要な情報を、それを必要としている人が、いつでも利用できるようにして下さい。
e) これらのプロセスを監視測定及び分析する適用可能な場合には測定し、分析する
各工程・作業・業務(プロセス)が、定められた通りに実施されているかを確かめるために、データを集め(監視、測定)、それを分析して下さい。
f) これらのプロセスについて、計画どおりの結果が得られるように、かつ、継続的改善を達成するために必要な処置をとる。
そして、各工程・作業・業務(プロセス)が、定められた通りに機能するように、又、更に効率の良い仕組みにするために、必要であれば、上記a)b)c)d)の作業をもう一度やってみて下さい(継続的改善)。
その際に、上記e)のデータや分析結果が役立ちます。
組織は、これらのプロセスを、この規格の要求事項に従って運営管理することしなければならない。
工程や作業(プロセス)は、ISO9001に合うように運営・管理して下さい。
要求事項に対する製品の適合性に影響を与えるプロセスをアウトソースすることを組織が決めた場合には、組織がアウトソースしたプロセスに関して確実にすることしなければならないアウトソースしたプロセスの管理について、組織の品質マネジメントシステムの中で明確にすること。これらのアウトソースしたプロセスに適用される管理の方式及び程度は、組織の品質マネジメントシステムの中で定めなければならない。
工程・作業・業務(プロセス)の一部または全部を外部に委託(アウトソーシング)する場合は、委託先に任せっきりにしないで、必要な管理を確実に実施して下さい。
その管理の方法や適用の範囲(程度)は定めておいて下さい。
外部に委託した製品も、その品質に責任を持つのは組織です、という意味です。

参考1. 注記1 品質マネジメントシステムに必要となるプロセスには、運営管理活動、資源の提供、製品実現及び測定にかかわるプロセスが含まれる。、測定、分析及び改善にかかわるプロセスが含まれる。
注記1 外注へ委託する場合の管理とは、製品そのもの(7章)だけではなく、「5. 経営者の責任」「6. 資源の運用管理」「8. 測定、分析及び改善」に規定される事項を含んでいます。
つまり外注へ委託する場合でも、自らの組織の一部と考えて管理することが必要です。ただ、全てを組織内と同様に管理することはできませんので、どういう管理をするかについては予め決めておく必要があります。
参考2.注記2 ここでいう、”アウトソース”とは、あるプロセス及びその管理を外部委託することである。”アウトソースしたプロセスを確実にする”とは、外部委託したプロセスが正しく管理されていることを確実にすることである。アウトソースしたプロセス”とは、組織の品質マネジメトシステムにとって必要であり、その組織が外部に実施させることにしたプロセスである。
注記2 アウトソースしたプロセスとは、外注に委託したQMSの適用範囲内の仕事を指します。つまり、事務用の文房具などを購入することを(品質管理の対象外ですので)アウトソースとはいいません、ということを言いたいようです。
注記3 アウトソースしたプロセスに対する管理を確実にしたとしても、すべての顧客要求事項及び法令・規制要求事項への適合に対する組織の責任が免除されるものではない。アウトソースしたプロセスに適用される管理の方式及び程度は、次のような要因によって影響され得る。
a) 要求事項に適合する製品を提供するために必要な組織の能力に対する、アウトソースしたプロセスの影響の可能性
b) そのプロセスの管理への関与への度合い
c) 7.4の適用において必要な管理を遂行する能力

注記3 仕事を外注に委託した場合に、定められた管理を行ったとしても、製品に対する最終的な責任は委託した側にあります。
管理の方法や範囲については、以下のような点を考慮しながら決めて下さい。
a) 仕事を外注に委託した場合、製品にどの程度の影響があるか
b) 自社と外注先で、どの範囲の管理を分担するか
c) 外注先が、「7.4.購買」で定めた仕組みをどの程度実行できるか

4.2. 文書化に関する要求事項

4.2.1. 一般

品質マネジメントシステムの文書には、次の事項を含めることなければならない。
以下のものを文書化して下さい。
a) 文書化した、品質方針及び品質目標の表明
品質方針と品質目標(5.3.、5.4.1.を参照)
b) 品質マニュアル
品質マニュアル(4.2.2.を参照)
c) この規格が要求する”文書化された手順”及び記録
ISO9001が求める以下の6文書を作成し、
「文書管理(4.2.3)」「記録の管理(4.2.4)」「内部監査(8.2.2)」「不良品の管理(8.3)」「是正処置(8.5.2)」「予防処置(8.5.3)」
ISO9001で「記録を維持すること(4.2.4.参照)」とある記録方法(様式や手順)を決めて下さい。
d) 組織内のプロセスの効果的な計画、運用及び管理を確実にするために、組織が必要と判断した文書決定した記録を含む文書
仕事を定められた通りに行うために必要な文書や記録を決め、管理(作成、承認、保管、廃棄、実行、改訂などを含みます)して下さい。
管理の方法は、c)の「文書管理(4.2.3)」「記録の管理(4.2.4)」に手順を定めておきます。
e) この規格が要求する記録

参考1注記1 この規格で”文書化された手順”という用語を使う場合には、その手順が確立され、文書化され、実施され、かつ、維持されていることを意味する。
一つの文書で、一つ又はそれ以上の手順に対する要求事項を取り扱ってもよい。
”文書化された手順”の要求事項は、複数の文書で対応してもよい。

注記1 ここでいう「文書化された手順」とは、単に文書を作成(文書化)することだけではなく、文書の管理方法を決め(確立)、その通りに管理し(実施)、必要に応じて見直しをする(維持)ことです。
6文書は、必ずしもそれぞれ一文書とする必要はなく、複数の手順を一文書にしたり(例えば、文書管理規定と記録管理規定を一つの文書にするなど)、逆に複数の文書に分けて記述しても構いません。品質マニュアルに全てを記述することも可能です。
参考2注記2  品質マネージメントシステムの文書化の程度は、次の理由から組織によって異なることがある。
a) 組織の規模及び活動の種類
b) プロセス及びそれらの相互関係の複雑さ
c) 要員の力量
注記2 組織の実態に合わせ、以下の点を参考にしながら、使いやすい文書を作成して下さい。
a) 組織の規模と仕事の種類
b)仕事や工程や作業(プロセス)の複雑さや、仕事の流れの複雑さ
c)仕事をする人の能力(力量)
参考3注記3 文書の様式及び媒体の種類は、どのようなものでもよい。
注記3 文書は必ずしも紙である必要はありません。
ファイルを直接閲覧できるような形でも構いません。但し、この場合、承認・確認・作成などが間違いなく行われていることが、分かるようにしなければなりません。

4.2.2. 品質マニュアル

組織は、次の事項を含む品質マニュアルを作成し、維持することしなければならない
品質マニュアルを作成し、必要に応じて見直して下さい(維持)。
品質マニュアルには、以下を必ず記述して下さい。
品質マニュアルは、組織のQMSの基本的な考え方を示すもので、ISO9001の条項に沿って、組織の実情に合わせ、分かりやすい表現で、作成していきます。
製品の製造(サービスの提供)に、直接間接に携わる人の、入門文書として使えるようなものが理想ですね。
a) 品質マネジメントシステムの適用範囲。除外がある場合には、その除外の詳細、除外を正当とする理由(1.2参照)
この品質マニュアルが適用される組織(部門・部署や支店・事業所・工場など)や製品を記述して下さい。
除外するものがある場合は、その部署・製品・条項と、除外する正当な理由を記して下さい。
但し、「1.2.適用」に、「除外することによって、顧客が求めているもの又法律や社会の決まりを順守できなくなるようであれば」除外できないとあります。
b) 品質マネジメントシステムについて確立された”文書化された手順”又はそれらを参照できる情報
4.2.1.c)で「文書管理(4.2.3)」「記録の管理(4.2.4)」「内部監査(8.2.2)」「不良品の管理(8.3)」「是正処置(8.5.2)」「予防処置(8.5.3)」の文書を作成するよう求めていますが、この品質マニュアルの中に記述するか、別に文書を作成する場合は、どういう文書に記述してあるかを、この品質マニュアルに書いておいて下さい。
c) 品質マネジメントシステムのプロセス間の相互関係に関する記述
この品質マニュアルが適用される範囲と仕事の流れ(プロセスの順序及び相互関係)を、書いておいて下さい。
文章よりも、図や表の方が分かりやすいと思います。
4.1.a)b)にも同じことが書いてあります。

4.2.3. 文書の管理

品質マネジメントシステムで必要とされる文書は、管理することしなければならない。ただし、記録は文書の一種ではあるが4.2.4に規定する要求事項に従って管理することしなければならない
4.2.1.c)で示された「文書管理(4.2.3)」「記録の管理(4.2.4)」「内部監査(8.2.2)」「不良品の管理(8.3)」「是正処置(8.5.2)」「予防処置(8.5.3)」の6文書は、以下に示す方法で管理して下さい。
但し、記録も文書の一つですが、記録の管理は、「4.2.4.記録の管理」に従って下さい。
次の活動に必要な管理を規定するために、”文書化された手順”を確立することしなければならない
以下の文書管理のルールを決め、文書で定めて下さい。
品質マニュアルに書いても、他の文書(例 「文書管理規定」)に書いても構いません。但し、他の文書に書いた場合は、文書名を品質マニュアルに書いておいて下さい(例 「文書管理規定」参照)。
a) 発行前に、適切かどうかの観点から文書を承認する。
文書は、内容が適切かどうかを確認し、承認して下さい。
通常は、承認者を決めておき、その承認者が承認して初めて発効する、という仕組みになります。
b) 文書をレビューする。また、必要に応じて更新し、再承認する。
文書は、定期的に、又、必要な場合に内容を確認(レビュー)し、必要に応じて更新し、4.2.3.a)と同じ要領で承認して下さい。
文書は、必要な場合に”のみ”内容を確認する、ということではありませんので注意して下さい。
そのため、文書を確認(レビュー)する時期は、年間スケジュールなどで決めておくと良いかもしれません。
c) 文書の変更の識別及び現在の改訂有効な版の識別を確実にする。
文書を変更した場合は、変更内容が分かるようにしておくと共に、改訂後も旧版が使用されることがないように管理して下さい。
通常は、改訂日や版数を表紙に表示し、旧版と区別しているようです。(文書の変更の識別)
また、改訂履歴というような文書を作り、どこが改訂されたか分かるようにしておきます。
更に、改訂版が発行された場合に、周知の方法、旧版の取り扱いなどの手順を決めておきます。
d) 該当する文書の適切な版が、必要なときに、必要なところで使用可能な状態にあることを確実にする。
文書は、最新版が必要なときに、必要なところで使用できるようにしておいて下さい。そのために、置き場所や閲覧の方法などを決めておきます。
e) 文書は、読みやすくかつ容易に識別可能な状態であることを確実にする。
文書は、読めなくならないよう(紙の場合は汚れや破損など、オンラインの場合は文字化けなど)管理すると同時に、読めないような状態である場合は取り替えて下さい。
始め、「文章は、誰でもが理解できるように、それぞれの組織に合った言葉や表現を用いる同時に、誤解を生じないような言葉や表現を用いて下さい」の意味かと思っていました。
f) どれが外部で作られた文書であるかを品質マネジメントシステムの計画及び運用のために組織が必要と決定した外部からの文書を明確にし、その配布が管理されていることを確実にする。
外部で作成された文書(法律や各種の規格、機器のマニュアル、顧客から支給された文書などがあります)の中で、仕事をする上で必要なものはどれかを決め、外部で作成されたことが分かるようにしておくと同時に、どういう場合にそれを使うか、最新版かどうかはどこで見分けるか、どこの置いてあるか、などを定めて管理して下さい。
g) 廃止文書が誤って使用されないようにする。また、これらを何らかの目的で保持する場合には、適切な識別をする。
廃止された文書(新しい版が発行されて不要になった旧版も含まれます)は、使用されないようにして下さい。通常は廃棄するのが最も確実ですが、必要があって保存する場合は、廃止された文書であることが分かるようにしておくと同時に、別の場所に置くなどの工夫も必要です。
つまり、「仕事をする上で使ってはいけない」ということが、はっきりと分かるようにしておくことが必要です。

4.2.4. 記録の管理

記録は、要求事項への適合及び品質マネジメントシステムの効果的運用の証拠を示すために作成された記録を、作成し、維持すること管理しなければならない。
記録(ISO9001で「記録を維持すること(4.2.4.参照)」とあるもの)は、製品が、手順通りに作られた(提供された)こと(要求事項への適合)、手順従えば求める品質の製品が提供できること(QMSの効果的運用)、を証明するためのものですので、ルールを定めてを管理して下さい。
記録は、読みやすく、容易に識別可能で、検索可能であること。組織は、記録の識別、保管、保護、検索、保管期間及び廃棄に関して必要な管理を規定するために、”文書化された手順”を確立しなければならない。
記録は、様式、作成方法、保管方法、紛失・消去などを防ぐための対策(保護)などを定め、何時でも閲覧できる状態にしておく(検索)と同時に、保管期間や不要になった記録の廃棄方法なども含め、文書に定めて管理して下さい。(文書は「4.2.3.文書管理」に従って管理して下さい)
品質マニュアルに書いても、他の文書(例 「記録管理規定」)に書いても構いません。但し、他の文書に書いた場合は、文書名を品質マニュアルに書いておいて下さい(例 「記録管理規定」参照)。
記録の識別、保管、保護、検索、保管期間及び廃棄に関して必要な管理を規定するために、”文書化された手順”を確立すること。記録は、読みやすく、容易に識別可能かつ検索可能でなければならない。
記録は、汚れや破損がなく(読みやすく)、他の文書や記録と容易に見分けが付き(識別可能)、何時でも閲覧できる(検索可能)状態にしてしおいて下さい。(文書は「4.2.3.文書管理」に従って管理して下さい)



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