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[辞典・用語][品質マネジメントシステム(ISO9001)-要求事項 2008年版 解説][5. 経営者の責任]


5. 経営者の責任

5.1. 経営者のコミットメント

トップマネジメントは、品質マネジメントシステムの構築及び実施、並びにその有効性を継続的に改善することに対するコミットメントの証拠を次の事項によって示すこと示さなければならない
経営者(トップマネジメント、以下、経営者)は、ISO9001に沿ってQMS(組織が構築した品質管理のシステムを指します)を構築し、実施して下さい。そして、常に改善を重ねていく(継続的改善)、という意思を以下の事項によって明確に示して下さい(コミットメント)。
ここでいう経営者とは、ISO9001が適用される組織に対し、責任と権限を持つ人のことです。
通常は社長であることが多いようですが、支社や工場単位で適用させる場合は、支社長或いは工場長であるかもしれません。
a) 法令・規制要求事項を満たすことは当然のこととして、顧客要求事項を満たすことの重要性を組織内に周知する。
法令や規制(更に、明確な法令や規制がなくても、その業界では当然のこととして求められること、などを含みます)を満たすと同時に、顧客の求めている仕様の製品(顧客要求事項)を提供していくことの重要性を周知して下さい。
b) 品質方針を設定する。
そのための理念・指針(品質方針)を定めて周知して下さい。
c) 品質目標が設定されることを確実にする。
理念・指針(品質方針)を実現するための目標を立てるよう指示して下さい。
d) マネジメントレビューを実施する。
このQMSが適切に運用されているかどうかを、経営者の立場から確認(レビュー)して下さい。
e) 資源が使用できることを確実にする。
このQMSが適切に運用できるよう、必要な資源(人・設備・環境など)を用意して下さい。

5.2. 顧客重視

顧客満足の向上を目指して、トップマネジメントは、顧客要求事項が決定され、満たされていることを確実にすることしなければならない。(7.2.1及び8.2.1参照)
顧客満足の向上を目指して、経営者は、顧客がどのような製品を求めているか(顧客要求事項)を明らかにし(7.2.1.製品に関連する要求事項の明確化」を参照)、顧客の満足が得られる製品を確実に提供できるよう(「8.2.1.顧客満足」に従って確認します)、そのために必要な施策を実行して下さい。

5.3. 品質方針

トップマネジメントは品質方針について次の事項を確実にすることしなければならない
経営者は、QMSの品質方針(理念・指針)を定めるに当たり、以下の点を考慮して下さい。
品質方針は、品質マニュアルに記述しても、別文書にしても構いません。
a) 組織の目的に対して適切である。
品質方針は、組織の目的に沿ったものであること。
b) 要求事項への適合及び品質マネジメントシステムの有効性の継続的な改善に対するコミットメントを含む。
求められる製品を提供するために定められた手順を守り(要求事項への適合)、更に顧客の満足が得られるような製品を作るための仕組みを作り上げていくこと(継続的改善)、を宣言(コミットメント)すること。
c) 品質目標の設定及びレビューのための枠組みを与える。
b)を実現するために、品質目標(5.4.1.の品質目標です)を立てるよう指示すること。
同時に、品質方針(理念・指針)は、品質目標(5.4.1.の品質目標です)が立てられるよう、具体的な方向性を示すこと(レビューのための枠組み)。
抽象的な品質方針では、品質目標が立てにくいためです。
d) 組織全体に伝達され、理解される。
品質方針(理念・指針)を、組織全体に周知すること。
e) 適切性の持続のためにレビューするされる
品質方針(理念・指針)は実現しているか、見直す必要はないか、常に確認し、見直す(レビュー)こと。

5.4. 計画

5.4.1. 品質目標

トップマネジメントは、組織内のそれぞれのしかるべき部門及び階層で、製品要求事項を満たすために必要なものを含む品質目標7.1.a)参照]が設定されている事を確実にすることしなければならないその品質目標には、製品要求事項[7.1.a)参照]を満たすために必要なものがあれば含めること。
経営者(トップマネジメント)は、品質目標を立てるよう指示して下さい。
品質目標は、一人一人立てることもありますし、部署ごとに、或いは、職種ごとに立てることもできます。
但し、部署ごとに、或いは、職種ごとに立てる場合でも、そこに属する要員一人一人が、その目標を達成するために何をするかということを認識した上で、作業を担当することは必要です。
また、品質目標は、品質方針を実現するために何をするか、QMSを運用するために何をするか、継続的な改善のために何をするか、ということを念頭に立てることになります。
混同しないように気を付けたいのは、ここでいう「品質目標」は品質方針(5.3.品質方針)を実現・達成するための目標であり、それに対して、「7.1.a) 製品に対する品質目標及び要求事項」の品質目標は、「個々の製品の品質を確保するために何をするか」という製品単位に設ける目標です。
品質目標は、その程度達成度が判定可能で、品質方針と整合性がとれていること。
品質目標は、達成の程度が評価・判断ができる具体的なもので、品質方針に沿ったものにして下さい。

5.4.2. 品質マネジメントシステムの計画

トップマネジメントは、次のことを確実にすることしなければならない
a) 品質目標及びに加えて4.1.に規定する要求事項を満たすために、品質マネジメントシステムの計画策定されるする
経営者は、品質目標(5.4.1.品質目標)と「4.1.一般要求事項」に定めたことを実現するための計画を策定して下さい。
b) 品質マネジメントシステムの変更が計画され、実施されるする場合には、品質マネジメントシステム”完全に整っている状態”(integrity)を維持しているに維持する
経営者は、QMS(組織独自の品質管理のシステムを指します)に関わる組織・設備・機能などの変更があった場合(QMSの変更が計画され実施される場合)、製品の提供を始める(実施する)前に、QMSで定めた通りに運用・実施できる状態(完全に整っている状態)を整えて下さい。
例えば、組織の変更があったような場合に、部門や工程の役割分担や手順が整備されていない、部門間・工程間での仕事の流し方(インターフェース)が整備されていない、という状態のまま、製品の提供をしない、ということです。

5.5. 責任、権限及びコミュニケーション

5.5.1. 責任及び権限

トップマネジメントは、責任及び権限が定められ、組織全体に周知されていることを確実にすることしなければならない
経営者(トップマネジメント)は、組織と責任・権限の範囲を定め、それを一人一人に周知して下さい。

5.5.2. 管理責任者

トップマネジメントは、組織の管理層の中から管理責任者を任命すること任命しなければならない
経営者は、管理層の中から管理責任者を選任して下さい。
管理責任者は、経営者に代わり、QMSを運用・管理することになりますので、それに相応しい人を任命する必要があります。
経営者が兼任することも、複数人を選任することもできます。
但し、以下に示す権限を行使できる人を選ぶ必要があります。
管理責任は、与えられている他の責任とかかわりなく、次に示す責任及び権限をもつこともたなければならない
管理責任者は、担当している業務の責任・権限以外に、以下のような責任と権限を持ち、以下のような役割を担います。
a) 品質マネジメントシステムに必要なプロセスの確立、実施及び維持を確実にする。
QMSに必要な仕組み(プロセス)を作り(確立)、それに従って仕事をし(実施)、必要であれば変更する(維持)権限を持たせて下さい。
b) 品質マネジメントシステムの成果を含む実施状況及び改善の必要性の有無について、トップマネジメントに報告する。
QMSの実施状況、改善の必要性について、経営者に報告する責任を負います。
c) 組織全体にわたって、顧客要求事項に対する認識を高めることを確実にする。
QMSは、顧客が求める品質の製品(顧客要求事項)を提供するためのシステムである、という認識を高めるような施策を実施して下さい。

参考1.注記 管理責任者の責任には、品質マネジメントシステムに関する事項について外部との連絡をとることも含めることができる。
注記 管理責任者は、QMSに関する事項については、対外的な窓口としての任務を担うことができます。
参考2.訳注: 管理責任者は、上記の責任及び権限を持つ限り、一人である必要はない。
訳注: 以上のような責任・権限を持つ管理責任者は、必要であれば複数人を置くこともできます。
ただ、対外的な窓口としての管理責任者は、一人にしておいた方が良いかもしれません。

5.5.3. 内部コミュニケーション

トップマネジメントは、組織内にコミュニケーションのための適切なプロセスが確立されることを確実にすることしなければならない
経営者は、組織内の必要な部署に、必要な情報が伝わる仕組み(プロセス)を作って下さい。(確立)
また、品質マネジメントシステムの有効性に関しての情報交換が行われることを確実にすることしなければならない
また、QMSの評価・問題点などの情報を交換するための機会や場を作って下さい。
例えば、そのための会議を設ける、既存の会議の議題の一つに取り上げる、などです。

5.6. マネジメントレビュー

5.6.1. 一般

トップマネジメントは,組織の品質マネジメントシステムが、引き続き、適切で、妥当で、かつ有効であることを確実にするために、あらかじめ定められた間隔で品質マネジメントシステムをレビューすることしなければならない
経営者は、QMSが適切で有効かどうか確認するため、期間を定め、
・QMSは現在の組織の内容や規模に合っているか(適切)
・QMSは現在の仕事のやり方に合っているか(妥当)
・QMSが適切に運用され機能し目的通りの効果があるか(有効)
を確認・評価(レビュー)して下さい。
マネジメントレビュー(以降、MR)のための会議を設けることも一つの方法ですが、既存の会議の一つの議題とすることでも良いですし、幾つかの会議に分けることも可能です。
MRに報告すべき項目は、「5.6.2.マネジメントレビューへのインプット」に決められています。
このレビューでは、品質マネジメントシステムの改善の機会の評価、品質方針及び品質目標を含む品質マネジメントシステムの変更の必要性の評価も行うこと行わなければならない
マネジメントレビューMRでは、
・現行のQMSに改善できるところはないか(改善の機会の評価)
・品質方針や品質目標を見直す必要はないか
・現行のQMSで変更する必要がある点はないか(変更の必要性)
を確認して下さい。
マネジメントレビューの結果の記録は維持することしなければならない(4.2.4参照)。
このMRに、どのような報告がなされ、どのような評価・判断が行われ、経営者からどのような指示があったかを記録して下さい。(記録は「4.2.4.記録の管理」に従って管理して下さい)

5.6.2. マネジメントレビューへのインプット

トップマネジメントへのインプットには次の情報を含むこと含めなければならない
MRへは以下のような事項を報告(インプット)して下さい。
a) 監査の結果
内部監査や外部審査の結果
b) 顧客からのフィードバック
顧客の組織に対する評価(「8.2.1.顧客満足」で定める顧客からの情報)、顧客からのクレームや指摘されたこと、顧客からの情報、など
c) プロセスの成果を含む実施状況及び製品の適合性
QMSの実施状況(成果や不具合なども含めて)、品質目標の達成状況、不適合製品の発生状況、など
d) 予防処置及び是正処置の状況
「8.5.2.是正処置」「8.5.3.予防処置」の実施状況
e) 前回までのマネジメントレビューの結果に対するフォローアップ
前回までのMRで指示のあった事項の報告
f) 品質マネジメントシステムに影響を及ぼす可能性のある変更
前回のMR以降に、QMSに関して変わったこと
・手順や要員配置など組織の変化
・顧客や法律・規制などの変化
g) 改善のための提案
QMSに関する改善提案

5.6.3. マネジメントレビューからのアウトプット

マネジメントレビューからのアウトプットには、次の事項に関する決定及び処置を含むことすべてを含めなければならない
MRで経営者は、以下のような指示(アウトプット)をして下さい。
a) 品質マネジメントシステム及びそのプロセスの有効性の改善
QMS(の基本的な方向性)や仕組み(プロセス)を更に良いものにするための指示。
b) 顧客要求事項への適合に必要なにかかわる、製品の改善
顧客の求める品質の製品を提供するために必要な製品の改良の指示。
システム(QMS)の改善指示は、a)で行っていますので、ここでは、顧客の意向を汲んだ上で、どのような製品を開発・提供するか、製品にどのような改良を加えるか、などを指しているのではないかと思います。
c) 資源の必要性
顧客の求める品質の製品を提供するために必要な資源(人・設備・環境など)に関する指示。



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